最近、働き方改革やワークライフバランスなど、「仕事の充実」「生産性の向上」「生活の質の向上」を目的にしたキーワードが注目されるようになってきた。特に世間で着目されているのはなぜか「残業がなくなるか」という論調が多い。
もちろん、個々人が快適に仕事をこなし、生活のバランスを取ることが、仕事の質の向上につながる。時代の変化が激しい今、個々の仕事の質を上げるだけでなく、仕事上で存在する無駄を省き、仕事の効率を上げることにより、全体の生産性を上げて素早く変化に対応していけるような職場を目指していかないと追い付けなくなっていることも事実だ。
このような働き方改革、ワークライフバランスを実現する上で必要となってくるのが、人工知能(AI)である。働き方改革とAIがどのように結び付いていくのか、業務へのAIの導入がどのように働き方改革を加速するのかを見ていくことにしよう。
働き方改革は日本が生き残るために必要不可欠な施策
安倍晋三首相は2016年9月、内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置。「一億総活躍社会」の実現に向けて働く人の視点に立って労働制度の抜本改革を行い、労働生産性を改善することで少子高齢化が進む中でも維持できる社会を作っていくことを目的としている。
なぜ今、働き方改革なのか。それは少子高齢化が進み、日本の人口、特に生産年齢人口が想定している以上のペースで減少している点が一つに挙げられる。
総務省統計局の調査結果によると、日本の人口は2005年に戦後初の減少となった後は再び増加し、2007~2010年の間は1億2800万人前後とほぼ横ばいで推移。しかし、2011年には26万人の減少となり、その後の月別の人口も相当程度の減少が続いている。人口減少は2011年から既に始まっているとみることができる。このまま人口減少が続くとすると、2030年の1億1662万人を経て、2048年には1億人を割って9913万人となり、2060年には8674万人、100年後の2110年には4286万人になるものと推計(内閣府)される。つまり、100年後には現在の3分の1程度まで人口が減少してしまうことになる。
生産年齢人口(15歳~64歳)についても、1995年には8000万人を超えていたが、そこをピークに減少している。2015年における生産年齢人口は7629万人だった。このまま生産年齢人口の減少が続くとすると、2030年には6875万人、2060年には4793万人にまで減少すると推計(総務省)される。
経営の4要素である「ヒト、モノ、カネ、情報」のうち「ヒト」がこのままでは確実に減っていくという事実であり、今までの働き方では、社会を維持することさえ不可能になっていくことは目に見えているわけだ。
このように生産年齢人口が減っていく、つまり労働力の不足を解消するためには、「働き手を増やす」「出生率を上げる」「生産性を上げる」の3つを確実にクリアする必要がある。これらの中で、ここでは特に「働き手を増やす」「生産性を上げる」という点に着目する。