2002年11月に日立製作所が打ち出した「Harmonious Computing」。これは“日立が持つプラットフォーム技術、アプリケーション開発力、業務ノウハウなどのすべてが調和する”コンセプトだという。このコンセプトを具現化する基盤として、同社が2004年9月に発表した製品がブレードサーバ「BladeSymphony」だ。BladeSymphonyが実現するHarmonious Computingとは何か。そして2005年、日立はエンタープライズシステムをどのように変革しようとしているのか。同社 代表執行役 執行役副社長の古川一夫氏に聞いた。
ご存じのとおり、日立はメインフレームの時代から今日のオープン環境に至る流れの中で、国内のエンタープライズシステム基盤を作ってきたという背景があります。昔のメインフレーム環境と異なるのは、さまざまなミドルウェアやアプリケーション、サーバ機器が組み合わさって1つのシステムを構成しているという点で、その中には当然メインフレームも入っています。
Harmonious Computingとは、こうしたさまざまな技術があたかもハーモニーを奏でるように調和を取り、最高のパワーが出せるように日立の技術力を活かすというコンセプトであり、プラットフォーム基盤のあり方と考えてください。Harmonious Computingの周辺には、自律化や仮想化、スケーラビリティ、ミッションクリティカルなど個々の要素技術が存在します。具体的には、国内シェアトップを誇る運用管理ツール「JP1」やRDBMS「HiRDB」、J2EEアプリケーションサーバ「Cosminexus」、ストレージ製品「SANRISE」のほか、NECと合弁して作った通信機器ベンダー「アラクサラネットワークス」など、さまざまな製品・サービスがあり、これらを組み合わせて調和を奏でるというのがHarmonious Computingの理念です。
Harmonious Computingのコンセプトは、オープン系のデファクトスタンダード製品なら何でも対象にしているというわけではありません。たとえば当社のHiRDBは、Oracleほど知名度はありませんが技術的には拮抗していると思います。アプリケーションサーバCosminexusもそうですが、ユーザー企業は「WebSphere」や「WebLogic」など知名度で導入する傾向があります。でも、それが本当に正しいのかといま一度問いかけていただきたいのです。
オープン技術の標準化が進んでいる現在、デファクト製品だからといってほかの製品より優れているとは限りません。今日のIT市場が混戦している原因もまさにそこにあります。その中で、より優れた製品同士を組み合わせ、いかに調和を持ったシステムを構築できるかが問われているわけです。当社の製品も、他社のデファクト製品をしのぐ技術を提供できます。ですからHarmonious Computingという名の下、これからは世界の競合他社に対して勝負をかけていかないといけません。
Harmonious Computingとは何か
--Harmonious Computingを具現化するサービスプラットフォームとして、2004年9月にブレードサーバ「BladeSymphony」を発表しましたが、これはHarmonious Computingの中でどのような位置付けになるのでしょうか。
BladeSymphonyは単なるIAサーバではありません。サーバ、ストレージ、ネットワーク、運用管理の機能を1つの筐体に収め、すべての管理を「BladeSymphony Manage Suite」で行える、Harmonious Computingの1つの姿です。
先ほど申し上げたとおり、いまのエンタープライズシステムにはさまざまな技術が搭載されています。これらの調和を取り、コンピューティングパワーを遺憾なく発揮させるためには、それぞれの技術が最適化されていなければなりません。 加えて、これらの技術の組み合わせが自由であることも重要です。また、「オープン性をキープしながら調和を取る」というニーズも高くなっています。BladeSymphonyはそれ自体が1つの調和したシステムの形であり、かつ他社の製品との組み合わせも自由というアーキテクチャになっています。--とはいえ、システムを構成するコンポーネントとしては、アプリケーションの存在も非常に大きいと思いますが。
そのとおりです。そこで問題となるのが、日立グループが持っているさまざまな業種・業務のノウハウと、Harmonious Computingのコンセプトをどう組み合わせてビジネスを推進するかという点です。これについて当社は昨年、「uVALUE」というコンセプトを立ち上げました。Harmonious Computingが奏でるサービスプラットフォームの上に、ユビキタス社会の価値創造を実現するというものです。よりわかりやすくいえば、プラットフォームの上に載せるアプリケーションを通じ、企業や個人の価値を創造していくというコンセプトで、企業や個人、公共など社会を構成するプレイヤーが、ITの活用によりイノベーションを起こし、その価値を向上させるということ。そのバリューチェーン構築を支援するのが日立製作所です。