NECは1月17日、電子カルテシステム「MegaOakHR」の製品化を発表した。価格はベッド数300床規模で2億4000万円。6月から販売を開始し、今後3年間で250システムの販売を見込む。
MegaOakHRは、複数の医療機関の間で電子カルテの情報を共有すると同時に、協業するNECシステムテクノロジー、シーエスアイ(CSI)の電子カルテシステムとの間でも、電子カルテ情報を共有できる。
これにより、普段利用するかかりつけの医師から専門的な検査・診療、入院が必要な治療が必要と判断され、ほかの病院に紹介されたときでも、カルテや診断画像、診療情報などの情報が紹介先の病院で利用される。つまり、重複した検査や投薬がなくなり、それまでの病気の経過を知ることができるので、継続した治療が可能になるというメリットをもたらす。
MegaOakHRは、NECシステムテクノロジーが開発・販売する、複数の病院に対応したウェブ型の電子カルテシステム「MegaOak-SyntheScope(シンセスコープ)」と、CSIが開発・販売する電子カルテシステム「MegaOak-MI・RA・Is(ミライズ)」というパッケージ間で電子カルテデータを相互に参照できる。
病院間で共有される電子カルテのデータはすべて暗号化されており、万が一の場合にもデータを閲覧することはできないセキュリティ対策を施しているという。今後は、タイムスタンプ局やPKI認証局などの共通基盤の整備状況によって、セキュリティレベルを高めることができるという。
現在NECは、電子カルテをさらに推し進めた電子紹介状の実証実験を担当している。これは、患者自身が自分の体に関する基本的な情報や処方情報、検体検査情報、診断画像などを収録した媒体を所有。それらの情報を持った患者は、どの病院に行っても情報を利用できる。MegaOakHRは、これらの電子紹介状に対応することが可能だ。
またMegaOakHRでは、患者の名前、生年月日、血液型、アレルギー、感染、疾患状況などの概要情報を収録するほかに、性別や年齢にあわせた顔イラストを自動的に表示する機能を搭載。これにより、患者の確認するのを支援することができるようになっている。また、診療履歴、処方や注射を実施していいのかどうかをチェックする機能も搭載している。
NEC執行役員の岩波利光氏は「MegaOakHRでは、ベッド1床当たり80万円で電子カルテを導入できる。これは従来より20%コストを削減することになっている」と説明。また、MegaOakHRでは、業務フロー提案で導入工数を削減でき、導入作業の標準化を図っている。「導入費用低減と導入のための手法を変えることで、電子カルテの普及を促進できる」(岩波氏)という。
MegaOakHRの導入に当たっては、「MegaOakHR-BS」と「MegaOakHR-CS」という2つのメニューを用意。MegaOakHR-BSは業務フロー提案型であり、電子カルテ導入にあわせて業務改革・改善を支援するというもの。MegaOakHR-CSは、個別仕様アプローチ型であり、病院内のニーズに合わせて電子カルテ導入の業務改革を支援するというものだ。
NECでは、このMegaOakHRにあわせて、電子カルテブランドを統合することも発表している。これまでNECは、電子カルテ関連では「MegaOak-CS」「MegaOak-BS」と診療サポートシステム「NEOCIS」というブランドだったが、これをMegaOakというブランドに統合している。ブランド統合により、協業企業であるCSIの「HS-MI・RA・Is」はMegaOakHR-MI・RA・Isに、NECシステムテクノロジーの「SyntheScope」はMegaOakHR-SyntheScopeとなっている。
電子カルテのブランドを統合する目的について岩波氏は、「技術交流と共通部品開発で、新しい技術に早く安く対応して、電子カルテ普及に寄与するため」と説明する。