利用部門が「使いやすさ」追求し新商品開発支援システムを構築

石田巳津人(月刊ソリューションIT編集部) 2006年02月22日 10時00分

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先進企業のビジネスとITの融合術を示す/アサヒビール

 感性と創造性が求められる飲料業界の新商品開発。アサヒビールは、その開発プロセスを支えるシステムを構築し、運用を開始した。前例がない取り組みだったが、「やるからには本当に役立つシステムを作る」という、エンドユーザーの強い思いがIT部門やベンダーをも動かした。

新商品開発支援システムを
2004年夏にリリース

 飲料業界では、日々激しい新商品開発競争が繰り広げられている。その中でアサヒビールは、ビールを中心とした酒類からソフトドリンクまで幅広い分野で新商品開発を手掛ける。最近では、いわゆる第3のビールである「アサヒ新生3」などが話題を呼んでいる。

 同社内では常に40を越える新商品開発プロジェクトが動いており、次なるヒット商品を虎視眈々と狙っている。それは社内でも異質な業務に属する。

 酒類事業本部新商品開発第一部・部長の伊藤義訓氏はこう話す。「基本的に商品の企画開発は個人業です。個々の担当者がキャッチフレーズからネーミング、パッケージデザインまで最終的に1人で決めます。チームの多数決では良い商品は生まれません。個人の強いこだわりや思いが、結実したものが商品なのです」。

アサヒビール 酒類事業本部
新商品開発第一部 伊藤義訓部長

 つまり、消費者の好みの変化をかぎ取り、新しいメッセージと味わいを創り出す感性や、創造性が求められる世界なのだ。システム化による業務標準化やコラボレーション、マネジメントなどとは縁遠いように思える。

 ところがアサヒビールは、こうした機能を盛り込んだ新商品開発支援システム「Hits」を構築、2004年夏から稼働させている。

個人業である新商品開発の
プロセスと結果を共有

 伊藤氏はその背景を次のように説明する。「新商品開発はクリエイティブなものとはいえ、標準化すべきプロセスや共有すべき情報があります。また、最低限のマネジメントも必要です。そうした部分をシステム化することで、個人が考える時間を増やし、経験のない社員でも早く1人前になって実力を発揮できるようになればと考えました」。

 たとえば、パッケージデザインを考える場合、原材料表示やリサイクルマークなど、法律や業界の取り決めで定まった要件がある。新商品開発のプロセスでは、こうした仔細な要件もクリアして進めなければならない。これに「ヌケ」や「モレ」があると手戻りが発生して効率が悪くなるばかりでなく、最悪の場合、商品回収という事態にまでなってしまう。

 さらに、新商品開発では市場調査がつきものだが、これまでは、時間とコストをかけた市場調査の情報も個人の机にしまわれ、部門で共有化されることはなかった。そのため、同様の調査を別の社員がするようなこともあった。それにより発生するムダな作業や、コストも存在していた。

 そして2001年以降、同社は総合酒類メーカーとして多品種の商品を手がけるようになった。それにより、多くの新商品開発プロジェクトが同時進行するようになり、伊藤氏などマネージャクラスが進捗状況を把握するのが困難になってきていたのだ。

 そこで「こうした問題ならITが得意なはず」(伊藤氏)と、社内のIT部門に相談を持ちかけた。そこからHitsの開発構想が生まれ、プロジェクトが2003年の夏からスタートした。

 通常のシステム開発プロジェクトと異なっていたのは、エンドユーザーとなる新商品開発部が「やるからには本当に役立つものをつくる」という強い思いで臨んだ点だろう。

 「IT分野で従事する人からすると、かなりわがままな要求をしたようで、開発のNECさんも苦労されたようです。ただ、お仕着せで使いづらいシステムを導入されても、そのうちにだんだんと使われなくなります。それだけは避けたかったのです」(伊藤氏)。

 その思いが伝わり、システム開発を担当したNECも専任者を新商品開発の現場に張り付け、担当者から徹底してヒアリングし、業務を分析した。「同じ新商品開発部門の人間でさえ隣が何をやっているのか分からない中で、NECの担当者は最後のころには、われわれよりも新商品開発のプロセスに詳しい面もありましたね」(伊藤氏)。

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