利用部門が「使いやすさ」追求し新商品開発支援システムを構築 - (page 2)

石田巳津人(月刊ソリューションIT編集部)

2006-02-22 10:00

システムの要求定義も
商品開発部がやり取り

 システムの要求定義についても商品開発部が直接、NEC側とやり取りして詳細を詰めていった。

 では、IT部門はどういった役割を担ったのだろうか? 伊藤氏は「エンドユーザーであるわれわれの言葉や思いをNEC側へ通訳するような立場でした」と答える。そのためIT部門とベンダーだけで要求を定義していたら、あり得なかったような仕様も盛り込まれている。

 たとえば、開発企画書を定型フォーマットで入力した後、それをPowerPointに出力、そのまま社内資料に流用できようにした。帳票データのExcel出力は一般的だが、企画書データのPowerPoint出力は珍しい。また、ログインのタイムアウト制御も通常なら1時間程度のところ、「ちょっと打ち合わせで離席した程度で強制ログアウトされるのは使いづらい」と8時間を要求した。一事が万事である。エンドユーザーの要求を最大限に取り入れたのだ。

1年の開発期間を経て
Hitsが予定通り稼働

 プロジェクト開始から約1年後の2004年夏、Hitsはほぼ予定通り本稼働を迎えた。そのシステム概要は次のようになっている。

 ウェブシステムとしてイントラネット/エクストラネット経由で、社内外のDBと連携。共通画面では、過去の市場調査やリアルタイムな市況情報を見ることができる。アサヒビール全社で管理している文書をキーワード検索したり、また特許庁の特許情報なども検索、参照したりもできる。

図1 新商品開発支援システム「Hits」のシステム概要

 担当者ごとの個人画面には、各自がかかわる新商品開発プロジェクトが表示される。個々のプロジェクトはプロセス管理されており、プロセスごとに必要なタスクや文書入力例が画面上に表示される。タスクを完了しないと次のプロセスにいけず、「ヌケ」や「モレ」を発生させない仕組みだ。

 マネージャが使う管理者画面では、全プロジェクトの進捗を一覧表示。納期遅れが生じていると赤で強調表示され、クリック1つで詳細な状況も確認できるようになっている。

 伊藤氏は、稼働後1年以上がたった現在、Hitsの導入効果を次のように評価する。

 「担当者はクリエティビティとは関係のない業務に割く時間が減り、じっくりとモノを考える時間が確実に増えています。情報の共有化で市場調査にかかるコストも減少しました。それと誰にでも、新商品開発のプロセスが短い期間で一通り分かるようになり、経験の浅い社員が商品開発に貢献してくれるようになりました」と。

 担当者を管理して縛るものではなく、あくまでも創造活動を支援するためものというHitsの導入目的は、かなりのレベルで達成されているようだ。それも自分たちが「本当に役立つもの」を追求し、そして実際に使い込んでいるからだろう。

 ベンダーによる徹底した業務分析に加え、要求定義でエンドユーザーがベンダーと直にやり取りし、自らが望むシステム像を明確にしたことが、あまり前例がないシステムながら開発をスムーズに運ばせ、実際に導入効果をもたらしたのだろう。

 システム開発がつまずいたり、稼働後の満足度が低いのは、エンドユーザーの要求があいまいだったことに起因する場合も多い。

 伊藤氏は「Hitsはまだ開発第1フェーズが終わっただけです」と話す。実は、Hitsの名前に込められた意味は「ひらめきインスパイアツール」だ。伊藤氏は、個人の感性や創造性に深くかかわる「ひらめき」を喚起する仕掛けのシステム化を視野に入れているのだ。実現は簡単ではないだろうが、今後の成り行きは興味深い。

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