NECと東芝は6月6日、256MビットクラスのMagnetic Random Access Memory(MRAM)実現に必要な基盤技術を発表した。両社は、共同開発した技術を用いて記憶容量16MビットのMRAMを試作し、256Mビットクラスまで高集積化した場合でも作動することを検証した。
MRAMは、メモリ素子の磁化方向の違いで情報を蓄積するメモリ。電荷で情報を保持する現在の一般的なメモリと違い、無限回数の書き換え耐性や不揮発性といった特徴を備える。MRAMで使う磁気抵抗素子であるMTJ素子は、半導体プロセス終了後に作製可能であり、CMOSデバイスと混載しやすい。MRAMには、1V程度の低いセル動作電圧や、既存メモリよりも高い動作温度というメリットもある。
両社は、2枚の磁性薄膜で絶縁膜を挟む構造のMTJ素子について、独自開発のプロペラ型素子形状を採用した。これにより、メモリセルに対する書き込み可能な時間が拡大し、誤書き込みの低減に成功した。また、誤書き込み低減の効果により、「約4mAという世界最小の書き込み電流値での安定動作が可能となった」(両社)。
さらに、両社は配線構成の改良、電流駆動の最適化により低電圧動作および高速読み書きを実現する回路技術と、MRAMの微細加工に必要な磁性体のエッチング技術など各種プロセス技術も開発した。試作した16MビットMRAMの主な仕様は以下のとおり。
- 電源電圧:1.8V
- 製造プロセス:130nm CMOS、240nm MRAM
- サイクル時間:34n秒
- 読み出し/書き込み帯域幅:毎秒200Mバイト
- セルサイズ:1.872平方ミクロン