IDC Japanは6月27日、国内で提供される企業向け通信サービスのニーズを把握するために実施した企業ユーザーデマンド調査における調査結果と分析を発表した。
この調査は、広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)サービスを中心とした、国内の企業向け通信サービスについて、企業ユーザーのニーズ動向を把握するために、IDC Japanが2月に実施したもの。今回の調査では、従来のIP-VPNおよびインターネットVPNに加え、低廉なブロードバンド回線をアクセスとして利用するキャリア提供の閉域網をライトVPNと定義し、調査を実施した。
調査によれば、インターネットVPNの普及拡大が顕著であることが明らかになった。主に流通業において急速に伸びており、IDCでは、今後1年間でサービス業や製造業においても普及が拡大すると予測している。
2005年から2006年にかけて、インターネットVPNの採用率は21.2%から31.5%に上昇した。従来型のIP-VPNは、約17%の普及率となっている。ライトVPNの普及率は1割に達しておらず、1年以内の使用開始を予定している回答者もごくわずかとなった。
インターネットVPNが急速に普及拡大している要因として、企業ユーザーのコスト意識がうかがえる。また、インターネットVPNを基幹WANに位置付ける企業が増えている。回答者の22.2%は、インターネットVPNが自社のコアネットワークサービスであると答えており、他のWANサービスと比較して最も高い割合となっている。
一方、広域イーサネットサービスの企業における採用率は32.5%だった。広域イーサネットサービス市場において、回線数が堅調に伸びている一方で、同サービスを採用する企業の割合が減少傾向であることから、既存ユーザーによる拠点の拡大が重要なポイントになると分析している。実際、広域イーサネットのユーザーの9割以上がサービスをそのまま継続して利用する予定であり、その中の21.7%が今後1年間で、帯域拡張を予定している。
また、一部の専用線ユーザーで広域イーサネット、IP-VPN、およびインターネットVPNへの移行傾向が継続している。ただし今後1年間の専用線におけるネットワーク計画では、現状維持および帯域拡張を予定しているユーザーがそれぞれ52.6%および21.1%を占めており、その理由について、当該ユーザーの半数以上が「現状のサービスに満足しているから」と回答している。
IDC Japanコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの門脇博之氏は「今年の調査で明らかになった主な点は、低廉なインターネットVPNの急速な普及拡大と信頼性の高い専用線の利用継続の傾向である。IP-VPNが成熟期を迎える一方で、広域イーサネットは安定した成長を継続しているが、WAN市場全体の成熟化によりよって新規ユーザーの獲得は一層困難になっている。今後、WANサービスの展開では、ネットワークサービスを基盤としながら、法人向けにさらに高い商品力を持つサービスが求められる」と分析している。