NECは8月18日、窒化ガリウム(GaN)製トランジスタによるW-CDMA方式携帯電話向けの基地局用送信アンプを発表した。ピーク出力は「世界最高クラス」(NEC)の400W(周波数2.14GHz)あり、3次相互変調歪は-50dBc(平均出力電力60W)となっている。
従来の送信アンプは、ガリウム・ヒ素(GaAs)またはシリコン(Si)半導体のトランジスタを使っており、200W以上の出力を得るには電力合成が必要である。電力合成回路を導入すると、送信アンプの容積が増すほか、電力合成損失の増加による消費電力の増大が発生し、NECは「小型で高効率な送信アンプを実現することが極めて困難」としている。
NECの開発した送信アンプは、GaNトランジスタのゲート電極部に独自開発の「フィールド・プレート構造」を適用し、高い動作電圧45Vと高い電流密度1A/mmを両立させた。また、アンプの小型化が可能で、高周波部品点数が少ないシングルエンド増幅器回路と、アンプのメモリ効果を低減して歪み補償機構を有効に機能させるバイアス回路などを採用し、電力合成回路を用いずに400Wという高出力を実現した。
NECでは、1年から2年後の製品化に向け、研究開発を進めるとしている。