マルチメディア対応のシンクライアントでプラットフォーム最適化を促進するNEC - (page 3)

宍戸周夫(テラメディア)

2007-05-14 21:43

新仮想PC型シンクライアントの3つの特徴

 この新仮想PC型シンクライアントの特徴は3つ。「TCO削減」「セキュリティ」「モビリティ」である。前者2つは他社と変わらないが、一番の特徴は、システムLSIを搭載し、画期的な小型化を実現した「US100」にある。155×104×34mmというコンパクトなボックスをディスプレイの背面に取り付け、キーボードとマウスを接続すれば、端末環境がすぐに出来上がる。これが「モビリティ」だ。

 そして、もうひとつの懸案だったイニシャルコストについても、従来のシンクライアントシステムと比較して、34%ほど削減した。新LSIをベースに開発することで端末のコストを下げ、サーバ側のソフトウェアもアプライアンスのように作り込んだ。こうした施策により、イニシャルの実勢価格は1台あたり15万円程度にまでおさえることに成功したという。

 さて、その最大の特徴であるシステムLSIでは、何をしているのだろうか。

 「通常、PC画面の描画は描画LSIがやりますが、従来のシンクライアントはサーバに専用LSIがないため全部ソフトウェアで処理することになっていました。すると当然描画スピードは遅くなり、サーバのCPUパワーを消費することになります。そこで新仮想PCは描画命令のみをシンクライアントに送り込み、実際の描画については端末側で処理します」(平氏)

 また、VoIPによる音声通話についても、通話機能とその他の機能を、端末側とサーバ側で分担して処理をする。電話帳を検索するといった、ソフトフォンの機能は利用するものの、通話相手が決まり、SIPサーバで通信を開始して以降は、端末間で直接音声データをやり取りするという方式だ。この場合も、サーバ側には音声処理の負荷をかけずに実用的に使える。ハードフォンとソフトフォンのメリットを同時に実現するための仕組みであるという。

US100内部 シンクライアント端末「US100」の外装を外した様子。平氏がペンで示しているのが、シンクライアント用に開発されたシステムLSI「NetClient」だ。

プラットフォーム最適化を加速

 NECは、この新仮想PC型シンクライアントを開発するに当たって、市場調査を行った。「動画」や「音声」といった要素が、ビジネス用途のシンクライアント普及に当たって大きなポイントになるという分析は、そこから導き出されたものだった。

 ユーザー側の要求に耳を傾ける一方、NECもこのシンクライアントには大きな戦略的な意味を込めている。

 「シンクライアントをビジネスとして見た場合、NECは端末の販売で収益を得ようとは思っていません。われわれはこの製品が、サーバを含めたプラットフォーム全体を見直すきっかけになればいいと考えています。サーバを統合し、ストレージを統合し、ネットワークを統合し、クライアントを統合し、またIP電話を使って音声も統合し、全体のプラットフォームをNECが担っていくとういのが究極の戦略です。大きな野望の中の、ひとつのきっかけになるのがこのシンクライアントなのです」(平氏)

 NECは、シンクライアントを「プラットフォーム最適化ソリューション」として位置づけている。これまではややもすると、個別最適化でシステム構築がなされていたが、こうしたサーバを集めてレイヤーごとに統合し、リソースの動的な配分を行う。そして自律化、仮想化、グリッドという最新技術を駆使したプラットフォームに押し上げていく。そのための、クライアント統合を実現する手段が、シンクライアントというわけである。

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