そしてSFLCは、くみしやすい相手だと思われたくはないと考えている。「腰抜けだという評判が立ちはじめたら、こちらが何を言っても相手にする必要はないと決めつけられてしまう」(Ravicher氏)
Ravicher氏は、フリー/オープンソースソフトウェア分野の大物弁護士の1人であるEben Moglen氏とともにSFLCを設立した。コロンビア大学ロースクールの教授であるMoglen氏は、GPLの生みの親Free Software Foundation(FSF)の代理人を長年にわたって務め、新しいGPL version 3の作成も監督した。SFLCは当初、Open Source Development Labs(現在はLinux Foundationと呼ばれるコンソーシアム)から資金提供を受けたが、それだけではなく、IBMやHewlett-Packard、Red HatなどのLinuxオープンソースを支持する企業も後援者に名を連ねている。
SFLCがフリー/オープンソースソフトウェア関係者の側に立って法律で認められた主張をするのは、Monsoon Multimediaが最初ではなく、最近の例は他にもある。2007年7月には、Microsoftが新たにリリースされたGPLv3の規定から距離を置くことをめざした。しかし8月になって、Free Software Foundation(SFLCが法的代理人を務める)がそれに関して強い表現を使った声明を発表した。「我々は、Microsoftが我々の著作権を尊重し、我々のライセンスを遵守するよう確実を期すとともに、同じ立場にあるGPLv3ライセンサーを我々のリソースの限り支援する」とFSFは主張している。
堪忍袋の緒が切れる
Monsoon Multimediaをめぐる法的論争には「BusyBox」と呼ばれるソフトウェアが関与している。これは、メモリに関する制約が厳しい機器に合わせて調整された一連のユーティリティである。このソフトウェアはGPL version 2に準拠している。GPL version 2は、修正されたソフトウェアがGPLによりリリースされることを条件として、ソフトウェアの中身を閲覧し、修正し、修正したソフトウェアを配布することをすべての人に許可する。この交換条件に魅力を感じたのが、Linuxカーネルの第一人者Linus Torvalds氏である。無償で入手可能なソフトウェアプロジェクトを誰でも利用できるが、それを変更する場合は仕事の成果を返すことが求められる。
このライセンスはまた、そのままコンピュータで実行できる実行可能な形式でGPLソフトウェアを配布する者にも、ソースコードをすべて公開することを求めている。たとえばCisco Systemsの子会社Linksysは、ワイヤレスネットワーク用機器に使用したGPLソフトウェアを共有可能にしている。
Monsoon Multimediaの「Hava」製品ラインアップは、顧客が複数のPCやインターネット上でビデオを録画して見ることができるようにする。2007年8月に、BusyBoxと同じくGPLに準拠するLinuxがHava製品のシステムに使われているかどうかをめぐる議論がHava Forumではじまった。この議論の中で、Hava製品のサポート担当者でハンドルネームGary-MMを名乗る人物が次のような書き込みをした。「ちょっとした秘密をみなさんに教えよう。HavaはLinuxを使っている。そう、ソースの大半はGPLだ」