プロプライエタリソフトウェアは既に“持続不可能な地点”に達した−Red Hat - (page 3)

渡邉利和

2007-10-22 13:20

オープンソースと“自由”

 Tiemann氏は、OSI(Open Source Initiative)のプレジデントも兼務している。一方、同氏はGNU C++コンパイラの開発者でもあり、FSF(Free Software Foundation)の活動にも詳しい。そこで同氏に、FSF流の“自由”についてどう考えるかを訊ねてみた。

 「私の意見では、FSFの基本的な立場は道徳や倫理に関するものだ。FSFは、仮に、ソフトウェアに関する自由が高品質を実現するための障害になるとしても、より良い革新を阻害することになるとしても、提供できる価値が最良のものとはならないとしても、仮にまともに動かないソフトウェアになるとしても、それでもそうした要素は問題ではなく、それよりもソフトウェアの“自由”のほうが大切だというだろう。FSFは、“自由”のために戦うほうが、“快適な奴隷状態”に甘んじるよりも良いことだと考えている」(Tiemann氏)

 一方、OSIの立場はそれとは微妙に異なる。

 「OSIは、ソフトウェアの“自由”が高品質、より大きな技術革新、より高い価値に結びつくのであれば、それがなぜなのか、どうしたらこうした要素が実現できるのかを追求すべきだと考えている」(Tiemann氏)

 同氏はさらに、品質管理の父と呼ばれ、本の製造業の発展に大きな影響を与えたWilliam Edwards Demingの考え方を引き合いに出して説明した。

 「Demingは『品質が最も大切だ』とは言っていない。彼は、『人生が意義深いものとなるように、変革の道を探すべきだ』と言ったのだ。50年前の工場労働者の生活は悲惨なものだった。そのため、工場労働者の人権を守り、公正な取引、公平な労働環境を確保するために努力する人が世界中にいた。こうした人々は、工場の状況が人間として到底耐え難いものであることに気づいていたからだ。こうした人々は、FSFと同様に、人権のために工場と戦った。デミングは、劣悪な環境からは良い製品は生まれないということを理解していたのだ」(Tiemann氏)

 さらに続けて「私自身は、FSFの立場に対しては共感できると感じている。しかしながら、品質、価値、パフォーマンスを高めるというゴールを設定し、こうした要素をソフトウェアの“自由”と結びつけることがより効果的だと考えている。そのため、私はソフトウェアの“自由”と品質、価値、パフォーマンスを両立させようとするOSIの立場の方がより適切だと感じている。一方だけに注力するのではない。OSIの強みは、こうしたバランス感覚にあると思う」という。

 FSFの自由を求める“戦い”に共感を表明しつつも、まずは生み出されるソフトウェアに注目するというのがOSIの代表としての同氏の基本的な考え方であり、同時にRed Hatのポリシーなのだと考えて良さそうだ。

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