顧客の満足度や画質のすばらしさは関係ない。Blu-ray DiscとHD DVDの争いの本質は、ロイヤリティーだった。
両者の戦いは終わり、Blu-ray Disc陣営はついに、PCメーカーや家電製品メーカーに対して、光学ドライブにBlu-ray Discドライブを採用するよう説得する機会を手に入れた。今後は、映画会社やディスクメーカーに対しても、Blu-ray Discを製作するよう求めていくだろう。そして、Blu-ray Disc規格のドライブやディスクが出荷されていくたびに、Blu-ray Disc Associationはロイヤリティーを手にするのだ。
ロイヤリティー収入は、驚くほどの勢いで膨れ上がる。たとえばDVDだ。DVD技術およびフォーマットの主要開発会社9社で構成するDVD6C Licensing Group(DVD6C)のライセンス料金表によれば、DVDプレーヤーまたはDVDドライブを合法的に製作しようとするメーカーは、最近まで1台あたり約4ドルを支払う必要があった。数年前には、この額は約15ドルから20ドルだった。このロイヤリティーは、DVDドライブがPCに搭載された場合にもその都度徴収される。いまや世界中のほぼすべてのPCがDVDドライブを備えており、毎年およそ2億5000万台ものPCが出荷されている。また、DVDディスクを合法的に製作しようとする企業も、ロイヤリティーを支払わなければならない。DVD6Cは、2008年1月になってディスク1枚あたりのロイヤリティーを4セントに引き下げたが、数年前は1枚あたり7.5セントだった。その上、認定料まで課せられる。
実際、このロイヤリティーが、「DVDの過ち」と中国の指導者たちが呼ぶ事態を招いたのだと、中国の清華大学で情報科学部の副学部長を務める牛志升氏は2007年、CNET News.comの取材に対して語っている。DVDプレーヤーを売る中国企業の多くは、競争の激化で赤字を抱えるか、なんとか損益なしといった状況だ。牛氏は、もうけているのは特許を所有する企業だと論じる。中国のメーカーは違法なプレーヤーを製作することで、ライセンス問題をすり抜けようとすることもしばしばだ(DVD Forumは、中国国内で製造販売されるDVDプレーヤーについて数年間ロイヤリティーを撤廃したが、そのプレーヤーの多くが中国国外に流れる結果となった)。
中国が独自の光学ディスク規格を推進している大きな理由の1つが、このロイヤリティーにある。
「独自の規格を開発することによって、独自の産業を持てるようにする必要がある。中国のDVD業界は巨大だが、おそらく赤字だ。だが、中国には独自の産業を持てるだけの大きな市場がある」と牛氏は語った。
ここで忘れてはならないのは、牛氏が街で海賊版を売っている人間ではないということだ。同氏は、中国の一流大学で高い地位にある研究者の1人だ。これから中国国内の雰囲気を推し量ることができるだろう。
CDも同様だった。アナリストの試算によると、CD1枚につき、Royal Philips Electronicsには約1.8セント、ソニーには約1.2セントがロイヤリティーとして入っていた。だが、一部の特許が期限切れを迎えた2001年当時、Philipsはロイヤリティー売り上げが約4200万ドルの減少になることを明らかにした。ロイヤリティーの徴収は一大ビジネスなのだ。