IDC Japan ソフトウェア リサーチアナリストの入谷光浩氏は、ヴイエムウェアが4月24日開催した製品発表会にて講演を行い、仮想化ソフトウェア市場の現状について語った。同氏は国内の仮想化ソフトウェア市場について、「メインフレームも含めた国内の市場成長率は2005年から2006年で64.9%。オープン環境での仮想化ソフトウェアに限定すると、同時期に80%も成長している。これは、ソフトウェアの成長率としてはまれにみる数字だ」と述べた。
オープン環境の仮想化ソフトは、「2006年から導入が本格化した」と入谷氏。2006年の国内の市場規模は58億円だが、入谷氏は「2006年から2011年の国内成長率は39.8%で、2011年の市場規模は310億円となるだろう」との予測を示した。2006年時点では、ヴイエムウェアが国内シェア59.8%となっており、同社が市場をけん引している格好だ。
39.8%という市場の成長率は、同時期のワールドワイドでの成長率27.1%を大幅に上回っている。それは逆に、日本市場が仮想化ソフトウェアで世界に遅れを取っていることの表れでもある。事実、2006年の日本の仮想化ソフトウェアの市場規模は世界の市場規模の約4.5%で、「日本のソフトウェアの市場規模は世界の市場規模の7〜8%であることから、仮想化市場は2006年の時点で世界に追いついていない」と入谷氏。ただし、同氏は2007年から2009年が日本における仮想化ソフトウェア普及期と見ており、「2011年には日本市場の規模が世界の約8%まで成長するだろう」としている。
IDCでは、現時点での仮想化市場を「Virtualization 1.0」としている。1.0では、テスト環境での利用やリソース配分、サーバ統合など、物理的なコスト削減を目的とした利用が中心となっている。しかし入谷氏は、仮想化のメリットはこれだけではないとして、1.0以上のマイルストーンについて説明した。
「2.0では、ヴイエムウェアの提供するVMotionのように、ダウンタイムなしでの仮想マシンの移行が進む。2.5では、計画外ダウンタイムが削減され、ワークロードのバランシングも可能となる。3.0では、IT基盤を仮想化し、物理ハードウェアとアプリケーションの分離が可能となる。つまり、これまで管理はサーバやストレージに依存していたが、それを意識しなくてもよくなるのだ。自動化に有効なソリューションも登場し、最終的には仮想化をプラットフォームとしたユーティリティコンピューティングが実現するだろう」(入谷氏)
仮想化が発展すると同時に、「市場ではベンダーの参入も多くなり、競争が激化する」と入谷氏は指摘する。2008年から2009年にかけては「ベンダーの戦国時代」とし、ソフトウェアの提供方法も「ハードウェアに組み込まれたりソフトウェアアプライアンスで提供したりと、多様化が進む」と入谷氏。
ますます発展が見込まれる仮想化市場だが、こうした中での問題点として入谷氏は、「SIerもユーザーも、仮想化をもっと理解し、物理的なサーバやストレージを意識した運用管理から、仮想化環境を意識した運用管理を考えるべき」と話す。また、「仮想化に対応したアプリケーションのライセンス体系やサポートも整備しなくてはならない。これがはっきりしないことで、導入に踏み切れないユーザーが多い」と指摘する。
最後にIDCからの提言として入谷氏は、Virtualization 1.0以降の利用方法も視野に入れ、「仮想化による本質的なメリットを訴求しなくては」と述べる。また、仮想化ベンダーにとってパートナー戦略が重要であることや、エンジニアの育成が必要なことを強調した。さらに、これまで仮想化ソフトは速いスピードで開発が進んできたが、「今後もベンダーはイノベーションを継続し、IT基盤を変化させる姿勢を見せるべきだろう」とした。