1990年代前半までのPC業界は、OSこそMicrosoftやAppleといった海外企業に牛耳られても、PC本体、つまりハードの販売では日本メーカーが圧倒的存在感を放っていた。しかしその後日本メーカーは、家庭向けPC市場では人気を保ちながらも、エンタープライズ市場での優位性は失い始めた。日本を代表するPCメーカーで、ノートPCの先駆者でもある東芝は、この状況にどう立ち向かっているのか。東芝 PC&ネットワーク社 PC第一事業部 PCマーケティング部 主務の荻野孝広氏に、同社のビジネスノート機の要諦を聞いた。
世界市場でも勝負をつづける
--「dynabook SS RX」などの最新機種について伺う前に、まずは御社のノート型機の状況をおさらいさせてください。東芝のノート型PCといえば、1993年から2000年までノートPCシェア7年連続世界1位を獲得するなど、日本だけでなく欧米市場でも人気が高い印象があります。海外での展開は今でも続けているのでしょうか。
はい。東芝のノートPC事業は、今日でもグローバル展開を続けています。東芝のノートPCは、世界での年間出荷量が1000万台を超えていますが、やはり欧米向けの出荷が大きいですね。一時は日米欧の市場が3分の1ずつくらいの割合に近づいた時期もあったのですが、やはり今では欧米が大きく、改めて海外市場の大きさを感じます。
--やはり、グローバル展開をすることの強みは、そうした大量生産時のスケールメリットでしょうか。
そうですね。東芝ではこのスケールメリットを製造コストに反映し、同じ価格でも他社より少し進んだ製品の作り込みができています。
それだけではありません。例えばRoHS(欧州における電子機器の特定有害物質の使用制限)など環境への配慮の基準は、日本やアメリカよりヨーロッパの方が進んでおり、断然シビアです。我々はヨーロッパでも製品を展開をしている以上、こうした高い基準にあわせざるを得ません。これは見方を変えれば、一歩進んだ環境への配慮を取り入れることができているということでもあります。
また、グローバル展開をすることで、製品が常に世界の最新トレンドにさらされることにもつながります。
--製品は世界中で同じものを展開しているのですか?
ええ。基本的には特定の市場だけに的を絞らないグローバルな製品を開発しています。ただし、どの製品を市場に出すかは、個々の市場のエリアマーケティングに委ねています。また、それとは別に、グローバルでビジネスを展開している大口顧客には、それぞれ個別の対応も行っています。
--国際派のジャーナリストの間では、dynabookは海外で製品サポートが受けられるという理由で人気がありました。このグローバルサポートはまだ健在ですか。
もちろん健在です。