シトリックス・システムズ・ジャパンは、デスクトップを仮想化するCitrix XenDesktop 2.0と、サーバー仮想化プラットフォームの最新版であるCitirx XenServer 4.1を発表した。
同社代表取締役社長の大古俊輔氏は、クラウドコンピューティングなど最近のITのトレンドは、できるだけハードウェアなどのITインフラに当たる部分を抽象化し「雲の向こう側にあるサーバーやアプリケーションがどのような環境で動いているかをユーザーから見えなくすること」だと言う。
そのために必要な技術が仮想化だ。
アプリケーションだけでなく、デスクトップの仮想化も
アプリケーションの仮想化についてはXenApp(従来のCitrix Presentation Server)で実現し、すでに多くの実績がシトリックスにはある。そして、昨年はXenSourceを買収したことでサーバーの仮想化技術を手に入れ、Citrix XenServerとして提供を開始している。
同社マーケティング本部 本部長の山中理恵氏は、「アプリケーションの仮想化だけでは、すべてのユーザーのニーズを満たすことができなかった」と述べ、従来Citrix XenAppが提供してきたアプリケーションの仮想化だけでは、比較的固定的な作業を行うタスクワーカーが対象というイメージが強くなっていたという。
企業には、よりフレキシビリティの高い作業をするユーザーや、CPUパワーを必要とするユーザーがいる。
大古氏も「シトリックスのユニークなところは、アプリケーションをデスクトップからサーバーに持って行き、アプリケーションの仮想化を実現してきたところだが、デスクトップそのものの仮想化部分についてはまだ抜け落ちていた」と語っている。
これに対応するのが今回のXenDesktopのデスクトップ仮想化技術だという。
XenDesktopは、XenServerで仮想化された仮想マシンでも、ブレードサーバー上の物理的なブレードPCであっても、そのデスクトップを配信できる。これにより、より高いリソースを要求するユーザーには、専用のブレードPCを用意することで対応できるのだ。
仮想化で先行する米国においてもサーバーの仮想化は全体の5%程度しかまだ普及しておらず、仮想化サーバーと物理サーバーが混在しているのが現実。この物理と仮想の両方のサーバーを混在させた状況で統一的に管理でき、それらを用いてユーザーに仮想デスクトップを提供できるところが、他社の仮想化やシンクライアントソリューションにはないシトリックスの強みだと大古氏は主張する。
XenDesktopにはEnterprise Edition、Advance Edition、Standard Edition、10ユーザーまで無償のExpress Editionの4種類が用意されている。
最高レベルのEnterprise Editionには、XenDesktopとXenAppを連携して利用するためのXenApp for Virtual Desktopsが統合されている。XenDesktop Enterprise Editionの価格は、最小構成の5同時接続デスクトップで25万9250円(税抜)からとなっている。
また、昨年10月に出荷を開始した4.0からバージョンが上がったXenServer 4.1は、エンタープライズ向けに拡張性と性能の向上が図られた。ストレージに対するサポート強化もなされ、XenAppに対する最適化も行われているという。
そして、今回のバージョンアップに合わせ、新たにPlatinum Editionが追加された。これには、仮想と物理の両サーバーに対し、ワークロードに応じた動的プロビジョニングが可能となる機能が実装されている。
新たに追加されたPlatinum Editionの価格は、サーバーあたり85万円(税抜)から。2008年7月末よりパートナー経由で販売を開始する。
「仮想化技術のシトリックス」への道
シトリックスは昨年のXenSource買収以降、自社の仮想化技術製品をすべて「Xen」ブランドに統一している。たんにブランドを統一し仮想化製品群を集めたというだけでなく、それぞれの製品を組み合わせて利用できるソリューションを示している点において、サーバー仮想化製品単体を提供する他社よりも先行している感はある。しかしながら、まだまだ「Windows環境におけるシンクライアントソリューションのシトリックス」というイメージが強いのも事実であろう。
同社がこの仮想化の分野でリードを保つには、アプリケーションの仮想化、サーバーの仮想化、そして今回新たに加わったデスクトップの仮想化という技術の違いをきちんと解説し、それぞれのメリットを確実にユーザーに伝える必要がある。さらにこれらを組み合わせると、システムの運用管理上どのようなメリットがあるかを具体的に示すことができれば、技術的なリードをマーケティング的にも拡大することも可能かもしれない。