――日本市場への参入計画は?
日本市場に関しては、われわれ自身がまだ日本市場の特徴について学んでいる最中である、という段階です。われわれはまだ企業規模が小さいので、充分なリソースが揃っていないということも、その理由の1つです。
私自身、日本市場への参入は簡単ではないと考えています。その理由としてまず挙げられるのは、われわれの技術的な問題です。
われわれのテクノロジーは「言語エンジン(Linguistic Engine)」をベースとしています。われわれのDLPソリューションは「どのような情報をフィルタリングして流出を遮断すべきか」を判断するためにいくつかの技術を組み合わせているのですが、中でも最も重視しているのが言語エンジンによる判断なのです。
言語エンジンのほかにも、データのフォーマットに関する情報も重要です。フォーマットとは、たとえば名前と住所の組み合わせであれば顧客データベースに格納されていた情報だと思われる、といった手法による判断です。また、4桁の数字が4組並んでいる場合は、クレジットカード番号であることが疑われます。
このほか、独自に定義されたルールでファイルの種類や特定の情報に対する「マスク」を定義することもできます。これらの定義は、ユーザーの情報から生成される「Finger Print(指紋)」と比較され、保護すべき情報かどうかを判断できるようになっています。
こうした技術は、多くのDLPソリューションベンダーで採用されているものです。
言語エンジンは、データに含まれる自然言語情報から特定の「語句(フレーズ)」を抽出し、それをグループ分けするために利用されます。データに含まれる語句が流出を禁止しているグループに属するものであれば、データの移動は遮断されるのです。
これはもちろん言語依存の技術であり、実装するにはそれぞれの言語に対応する必要があります。現在、InfoWatchのDLPソリューションでは6種類の言語をサポートしています。英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語です。日本語にはまだ対応できていないのです。
――日本市場にはいつ参入する計画か?
日本市場はわれわれにとっても有望な市場だと考えています。しかし、実際の対応では、まず中国市場向けが先行し、その後で日本に展開するという順序になるでしょう。
中国市場も大きな規模が見込めることと、日本市場に新たな製品を導入するのは簡単なことではなく、数年がかりになると予想されるためです。中国はウイルスの被害も多く、さまざまな情報保護製品が待望されている市場である点もわれわれにとっては好都合です。
日本市場は、製品の品質に関して極めて高いレベルが要求される市場だと考えています。もし、InfoWatchのDLPソリューションが他の国で成功すれば、日本市場でも成功できる見込みがあります。逆に、他の国で成功を収められないようでは、日本市場で成功するチャンスはないでしょう。
そこで、われわれはまず、より参入しやすい市場として中国にトライしてみる計画です。そこで市場からの要望や不満を聞いて製品をブラッシュアップすれば、日本にも進出できるはずです。
さらに、日本語対応を実現する上で、まず中国語に対応することは良い経験になると考えています。ひらがなやカタカナなど、日本語には中国語にない要素もあることは知っていますが、それでも漢字を含む中国語は、他のヨーロッパ言語よりも日本語に似た点があるはずです。そのため、まずは中国語対応で経験を積んでから日本語対応を考えていきたいと思っています。
現在、InfoWatchでは中国語対応のための作業に着手していますが、日本語対応については現時点でまだ作業を始めてはいません。日本市場への参入時期について確かなことは言えませんが、現時点では「2009年中の参入はない」とだけ言っておきます。