感動のアカデミー賞と笑いのラズベリー賞--エリック松永の英語道場(20)

エリック松永

2009-03-16 08:00

 What's up, man?

 世界中の映画ファンが注目するAcademy Awards(アカデミー賞)が2月22日に開催され、「スラムドック$ミリオネア」(原題「Slumdog Millionaire」)が圧倒的な強さで8部門を受賞しました。今回は、日本の作品「おくりびと」(英題「Departures」)が外国語映画賞を受賞し、日本も歓喜に包まれましたね。米国映画の最高権威の賞ですので、日本人としても誇りに感じました。ちなみに、米国で有名かつ権威のある賞としては、音楽のGrammy Award(グラミー賞)、テレビ番組のEmmy Award(エミー賞)、演劇のTony Award(トニー賞)が有名です。

 さて、映画界最高権威のアカデミー賞開催の前日に行われる有名な映画賞をご存知でしょうか。そう、その年の最低最悪な映画作品と俳優をたたえる(?)映画界の最低権威とも言うべきGolden Raspberry Awards(ゴールデンラズベリー賞)です。お笑いが大好きなアメリカ人。権威のあるものに対し必ずちゃかして笑おうとするお国柄です。

ラズベリー賞の面白さ

 「からかう」という意味の「razz」にかけて、ラズベリー賞のトロフィーの形は木苺(Raspberry)で、オスカー像とは対照的に木苺のトロフィーは不名誉の象徴。ラズベリー賞は俳優や製作者を馬鹿にした賞なので、ノミネートされた映画関係者や俳優が授賞式に参加することはなく、集まった参加者がアカデミー賞ばりに厳かな雰囲気で受賞者や映画を茶化し、盛大に笑い飛ばす式典です。しかし、生粋の映画ファンが集まっているのは事実で、意外と受賞作品はうなずける物も多く、毎年注目を集めます。日本では考えられませんよね。

Halle イラスト: まつなが みか

 こんなラズベリー賞ですが、さすが笑いの国アメリカ! なんと受賞式に参加した受賞者がいるんです。まさに「No Way!」ですね。その偉大なる1人の女優をご紹介しましょう。その女優とは、ご存知、大女優のHalle Berry(ハル・ベリー)です。

 Halle Berryは、2001年人種問題を強烈に扱った衝撃作「チョコレート」(原題「Monster's Ball」)で、African-American(アフリカ系アメリカ人)として初めてAcademy Award for Best Actress(アカデミー主演女優賞)を受賞したという実力派女優です。Obama大統領の話の回でアフリカ系アメリカ人の差別の歴史を書きましたが、当時Halle Berryが人種差別を扱ったこの作品で女優としての最高権威である賞を受賞したことは、歴史的快挙として大変な話題になりました。もちろん彼女もObama大統領を支持する有名人の1人です。

 そんな彼女が、2004年公開の「キャットウーマン」(原題「Catwoman」)で不名誉なラズベリー賞Worst Actress(最低女優賞)を受賞。しかも、なんと授賞式に参加したのです。

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