富士通にとって、Sun Microsystemsの買収先がIBMではなくOracleだったのは、“不幸中の幸い”だったのではなかろうか。
富士通とSunは長年、UNIXサーバ事業で販売を中心としたパートナー関係にあり、ここ数年は開発・製造も共同で行っている、いわば“運命共同体”の仲だ。それだけに、Sunの買収先がどこになるかで、自らのスタンスも大きく変わりかねない。
IBMがSunと買収交渉を行っている最中には、富士通の野副州旦社長が記者会見でこう語っていた。
「IBMがSunをどのような形で買収するかで我々の対応の仕方も変わってくるが、いずれにしても顧客起点から離れた方向に進むことは考えられない。どういう形になろうと、富士通はこれまで通り顧客資産を守っていくということを、IBMともきちんと話し合っていくつもりだ」
このコメントは「仮に買収交渉が成立したとして……」と問われてのものだったが、顧客の動揺を和らげようという思いが滲み出ていた。
富士通のこのスタンスは、最終的にSunの買収先となったOracleに対しても変わらないだろう。ただ、Sunと同じUNIXサーバ事業を展開しているIBMが相手だと、事業の統合・整理で梯子を外される事態も覚悟する必要があったが、Oracleが相手だとその心配はまずないといえる。
富士通とOracleの関係は、いわば右手で握手しながら左手で殴り合っているようなものだ。富士通は顧客の要望に応じてOracleのソフトウェア製品を扱っている一方、ソフトウェアの事業領域では競合する部分もある。
では、今回OracleがSunを買収したことで、富士通とOracleの関係に変化は起こりうるのか。このところのSunをめぐる買収の一連の動きに詳しい業界関係者はこう推測している。
「Oracleにとっては、Sunの持つハードウェアとOSのプラットフォーム事業が買収による最大のビジネスの攻めどころとなるが、一方で、ともすれば足かせになりかねない。とりわけ開発資金がかさむSPARCサーバ事業をどのようにドライブしていくか。この点ではSunとSPARCサーバを共同開発している富士通との間で、新たな提携形態が浮上してくる可能性もありうる」
Sunが取り持つ富士通とOracleの関係も、今回の買収劇がもたらす注目点といえそうだ。