電源やラックなど物理インフラを提供するエーピーシー・ジャパン(APCジャパン)は7月2日、データセンターやサーバルームの環境・管理・運用を最適化するためのアセスメントサービスを拡充することを発表した。
拡充されたアセスメントサービスは、(1)データセンタ熱分布アセスメント(2)サーマルスキャン・ライト(3)ワイヤリングクローゼットアセスメント――の3つ。同社は2008年12月からアセスメントサービスとして、「数値流体力学(CFD)を使用したデータセンタ空調解析」「データセンタ電源効率アセスメント」「データセンタ電源・空調アセスメント」を提供しており、今回の拡充でアセスメントサービスは6つになる。
今回追加された(1)のデータセンタ熱分布アセスメントは、配電盤やラック単体ごとの状態を赤外線カメラで撮影して、測定温度が業界のガイドラインを上回っている箇所を特定するというもの。赤外線カメラでは、配電盤やラックのほかに変圧器、断路器、無停電電源装置(UPS)、分電盤も測定するとともに、ビルを管理している会社が管理する主幹ブレーカーも測定する。
赤外線カメラで撮影された高温の箇所をデジタル写真が提供されるとともに、高温が指摘された配電線の電流値も計測・記録される。また目視検査でブレーカーなどの損傷状況を確認して、一覧表を作成して提供される。収集された情報は、情報システムを支える電気系インフラの保守記録確認となり、APCジャパンから改善策が提案される。価格は東京都内でラック数20台までで63万9000円となっている。
(2)のサーマルスキャン・ライトは、データセンタ熱分布アセスメントの簡易版であり、測定されるのは配電盤とラックだけになっている。その分、価格も安くなっており、東京都内でラック数20台までで26万4000円となっている。
(3)のワイヤリングクローゼットアセスメントは、スイッチやルータといったネットワーク機器、それを収納するラックを設置するための設計された部屋(これをワイヤリングクローゼットという)の中で集中する配線や機器を接続する配線装置の配線を分析・評価する。これらの情報をもとに、可用性の拡大に向けた問題の解決策や推奨事項が提案されることになる。
具体的には、配電の目視検査、UPSの状態、バッテリ構成・接続状況の記録、電源効率の把握、室内温度レベルの記録、ラック周辺の気流などの送風効率の解析などが含まれる。価格は東京都内で40回線までで22万2000円となっている。
現在の情報システムは、ハードウェアの高密度化や仮想化による消費電力の増加で、たとえば10年前と比較すると、データセンターやサーバルームの環境を大きく変えている。それに伴い、ハードウェアの可用性や冗長構成を支えるラック、冷却装置、電源などの物理インフラの管理・運用もますます複雑化・高度化せざるを得なくなっている。
その一方で2008年後半の世界的な景気減速によって、ユーザー企業としてはデータセンターやサーバルームを増設するよりは、今稼働させている情報システムをどのように有効活用させるかの方に関心が向くようになっている。APCジャパンが2008年12月からアセスメントサービスを提供する背景には、こうした企業のニーズに対応したものと指摘できるだろうし、APCジャパンでは、提供しているアセスメントサービスについて、まずはユーザー企業が現在稼働させている情報システムを支える物理インフラの現状把握に役立ててほしいとしている。