EMCジャパンが先頃、「EMC Forum 2009」を開催した。基調講演に登壇したEMC 主席副社長のHoward D. Elias氏は、先行き不透明な経済情勢の中、企業のIT戦略としてはクラウドコンピューティングの導入が有効であり、その基盤を提供するのが同社の役割であると説明した。
爆発する情報量を前にクラウド、そしてEMCは何をなすのか
依然として厳しい景況感が続く中、多くの企業ではIT投資の額を削減している。しかし、業務やサービスで取り扱うデータの量は増大を続けており、コンプライアンスに関する要求もより厳しくなるなど、ITインフラに対する需要は引き続き伸びている。一方で、これまで導入してきた多くのアプリケーションを管理するためのコストが増加しており、新しいアプリケーションへの投資が行いにくくなっているという現状もある。
Elias氏は「驚きの事実がある」として、今や企業のIT投資額の4分の3以上は既存環境を維持するための保守運用にあてられており、革新性や競争優位性を生む新規機能追加のための投資はわずか4分の1以下になっているというデータを紹介した。
このように、ITインフラは変化への対応を求められているが、それにかけられる予算は少ないというジレンマに陥っている。この問題を解決するのがクラウドコンピューティングであるという。
クラウドコンピューティングの定義
Elias氏は、「クラウドコンピューティングの定義を100人の人に聞くと、100通りの答えがある」と話すが、EMCは「インターネット経由でサービスとして提供されるITインフラストラクチャ」であると定義し、また「クラウドコンピューティングは未来の技術ではない」とも付け加えた。
クラウドコンピューティングのメリットは「柔軟性があり動的で、オンデマンドで利用できるので必要なときにお金を払えばいい」(Elias氏)ことにある。不況下で変化に対応するためのIT投資として、クラウドが有効であるのはこのためだ。
一方、「従来のデータセンターにもいい点はいろいろある」(同)。ユーザーが中身を完全に把握しており、既にアプリケーションが既に稼働している実績があり、ユーザー自身がセキュリティを保証できるといった点だ。
EMCは、データセンターに設置されているシステムを仮想化し、他のパブリックなサービスプロバイダーによって提供されるクラウドサービスと連携させるための基盤を提供する。典型的なものは、同社の主力製品であるストレージにおけるレプリケーション技術である。これにより、従来のユーザーが管理するデータセンターの良さを生かしながら、クラウドの導入で新たな競争力を得ることができる。最近では特に「プライベートクラウド」がキーワードとなることが多いが、同社は、従来のデータセンターとパブリックなクラウドサービスの両方を、仮想化技術によって統合的に利用できるようにしたものをプライベートクラウドとして位置づけている。