クラウドを見据えたデータセンターでの環境配慮
一方、クラウド環境への移行にあわせて、同社では月1万台のペースでデータセンターのサーバを増強しており、その点ではデータセンターのグリーン化も同社にとって重要な課題となっている。
ワシントン州クインシーに開設したデータセンターでは水力発電だけを利用し、使用した炭素を排出しないカーボンニュートラルを実現。サンタフェでは、雑排水を冷却システムに使用し、水とエネルギーの両方を削減したデータセンターを開設している。
さらに、同社において「第4世代」と呼ばれるアイルランドのダブリンに2009年夏に開設する最新のデータセンターでは、コンテナ型のセンターを採用。外気利用や冷却装置の導入、再生可能エネルギーの活用などにより、50%のエネルギー削減を実現するとしている。
研究開発部門での取り組み
「技術的進歩の礎となる研究開発」では、基礎研究を行っているマイクロソフトリサーチによる成果がある。
マイクロソフトリサーチが研究成果として開発した「SensorMap」は、センサーを通じて各種データを収集。現在、スイスの山中や、アラスカの氷河で計測を行っており、Virtual Earthと連動させ、気温の変化などを表示、分析することができるという。
また、データセンターの温度湿度管理を行う「Genomotes」では、マウスよりもひと回り小さいサイズのセンサをデータセンター内に設置。サーバラック全体の温度をどう管理していくかといったシミュレーションも可能になるとする。また、低消費電力プロセッサであるAtomをデータセンターに採用するといった研究も行っているという。
日本においては、建築設備システムのライフサイクル・ダイナミックシミュレーションの研究を、東京・調布のマイクロソフトイノベーションセンターを活用して行っており、人のランダムな行動をパラメータとして利用したり、設備機器が壊れた場合の温度の変化などを踏まえた動的なシミュレーションを可能にしている。
これは、早稲田大学創造理工学部の富樫英介博士が研究に取り組んだもので、マイクロソフトイノベーションセンターの「Windows HPC Server」を活用してシミュレーションしたものだ。加治佐氏は「将来的には、複数のビルや街全体をミュレーションすることも可能になっていくだろう」とする。
企業としてのその他の環境貢献
「環境に対する責任ある企業活動」としては、各国ごとに様々な取り組み実績があるが、その中から、企業活動では、ボリュームライセンスにおける「Digital by Choice」、中古PC再利用を促進する「MARプログラム」、社内で取り組む「Go Green活動」について説明した。
Digital by Choiceは、これまでCDやDVDの配送を主としていたボリュームライセンスプグラムの受け取り方法をダウンロード中心にしていく取り組みで、メディア送付枚数の実績は、2008年度の108万枚から、2009年度は35万枚と70%削減。CO2換算で27トンの削減を実現したという。2010年度には、新規契約の70%、既存契約の50%をDigital by Choiceにしていく計画だ。
MARプログラムは、マイクロソフトがWindows OSのセカンダリライセンスを中古パソコン事業者に対して提供するというもの。ユーザーは安心して、かつ安価に再生PCを購入できる。これにより、廃棄PCの減少を通じた循環型社会の実現に貢献できるとする。
Go Green活動では、2009年度の活動として、社内で使用しているPCのスリープおよび休止モードの利用促進といった省エネ活動を行う「IT Tips」や、ゴミ分別活動、会議室の標準空調温度設定についての案内シールを室内に貼付することで注意を喚起するといった活動を行っているという。
竹原氏は、「2010年度の方針として、Windows 7、Windows Server 2008 R2などの新製品やテクノロジを環境の観点からも提案し、顧客の環境対策を支援する一方、環境/グリーンITをテーマにした産学連携を加速。さらに、社内の環境保護活動を加速していく。2012年度に向けて各国ごとに目標値を設定している最中であり、それに向けて取り組んでいくことになる」とした。