最高情報責任者(CIO)が最重視する将来のテーマはビジネスインテリジェンス(BI)――。IBMがグローバルのCIOを対象に行った調査「IBM Global CIO Study 2009」で明らかになっている。日本IBMが10月29日に発表した。
グローバルで約8割、日本で約7割のCIOがBIを競争力強化のための取り組み検討分野に上げている。今回の調査では、CIOの行動様式を分析、高成長企業のCIOは6つの特徴が明らかになっている。
- 洞察力に富んだ先見者
ビジネス戦略実現の推進者として積極的に活動し、イノベーション実現のためにビジネスとITの融合を積極的に進めている - 有能な実務者
イノベーション推進のために社内あるいは取引先や顧客とのコミュニケーションを行うためのさまざまな方法を実現したり、情報の共有や活用を行うためのテクノロジーやサードパーティーの業務、ITサービスの利用を推進している - 見識ある価値創造者
企業内に蓄積されたデータを有用な情報へと積極的に加工している。将来に向けてさらに統合化された情報をより効果的、効率的な手段で入手、提供することで顧客関係の強化の必要性を認識している - あくなきコスト削減追求者
インフラの高度な統合、集約だけでなく、ビジネスプロセスを標準化し、統合することでコスト削減の実現を考えている - 協働するビジネスリーダー
事業部門のリーダーの戦略立案に深く関わり、ビジネスに対するITの貢献について、経営陣から非常に高い評価を受けている - 組織を活性化するITサービス提供者
ビジネスとテクノロジーのイノベーション実現を推進するための専門家チームを設立し、効果的に新しい施策の導入に取り組んでいる
グローバルと日本を比較分析してみると、ITの重要性に認識の差異はなく、ビジネスとITの融合の推進など、実績に関する自己評価も同様のレベルだったという。
その一方で日本の場合、ビジネスモデルの変化に対応が必要、多大な変化が必要と考えているCIOが多く、変化の要因としてグローバル化と人材スキルを重視していることが判明している。グローバルと日本との相違があるのは以下の7点だ。
- ITの役割
日本はグローバルに比べて、ビジネス側がITの役割を「事業と企業ビジョンの具現化」よりも「ITサービス提供」により軸足を置いて見ている - CIO活動時間とIT予算の配分
日本はグローバルに比べて、新しいテクノロジーの導入やビジネスイニシアチブの実行に配分するCIOの時間も予算も少ない - 将来の重点テーマ
上位3つ(BI、仮想化、リスク管理とコンプライアンス)はグローバルと共通だが、クラウドやSaaS、全社横断的な人材開発については日本の方が積極的。一方、セルフサービスポータルやソーシャルネットワーキングなどは、グローバルに比べて積極的ではない - CIOの役割と責任
日本はグローバルに比べて、CIOがITを専担する役員である割合が大幅に少ない - ビジネスとITの融合
グローバルでは「ビジネスとITの融合」の実践レベルと、企業の成長実績との相関関係が高いが、日本ではその相関が低い - CIOの行動様式
日本はグローバルに比べて、組織を活性化するITサービス提供者の特性値が大きく、洞察力に富んだ先見者、協業するビジネスリーダー、有能な実務者の特性値が小さい - 外的要因の認識
日本はグローバルに比べて、今後3年間でIT部門に最も大きな影響を与える外的要因として、人材スキルを重く見ていて、IT部門は相当大きな変化を必要としているという認識をより強く持っている
日本IBMとIBMビジネスコンサルティングサービスは、今回の調査結果に独自の業種横断分析を加えた考察を実施。その結果として、CIOの行動が企業の成長に最も影響しているのは金融、保険であり、その次に旅行、運輸、製造で高い相関関係があったとしている。企業規模別では、大企業に比べて中堅企業の方が、CIOの行動と企業の成長に大きな相関関係があることが判明しているという。