オープンソースソフト(OSS)であるLinuxの進歩を支えているのは、言うまでもなく開発コミュニティーだ。しかし、開発コミュニティーの成果物であるLinuxを企業の情報システムに、社会全体に普及させるには、コミュニティーの草の根的な活動に、IT企業・ITユーザーの要件を融合させる必要がある。そうした開発コミュニティーとともにLinuxの普及促進を目指す団体の一つが、The Linux Foundation(TLF)だ。
TLFは、2007年2月にOpen Source Development Labs(OSDL)とFree Standards Group(FSG)が合併して誕生した非営利組織。TLFで日本担当ディレクタを務める工内隆氏は、日本でのLinuxコミュニティーとの交流、各ワーキンググループ(WG)、主要メンバー会社との協調を通して、日本での活動全般に責任を持っている。その工内氏は、TLFの現段階での目的について「Linuxの普及促進、保護、標準化にある」と語る。
ビジネス要件とコミュニティーとのギャップ
TLFの目的である、Linuxの普及促進のためにThe Linux Foundation Japanはシンポジウム主催といった活動を続けている。
「シンポジウムは“コミュニティーとの橋渡し”という意味を込めて、開催しています。日本で開催するシンポジウムが目指すものは、二つあります。一つは、コミュニティー参加者の母数の増大。もう一つは日本の技術者が持つ、技術に対する“感性”をもっとLinuxをはじめとするOSSに実装したい、というものです」(工内氏)
現在、Linux/OSSは日本はもちろん世界的に、企業の情報システムの基盤として採用されているが、つぶさに検証していくと、企業が求める要件とコミュニティーの“思い”との間にはまだギャップが存在しており、企業システムのある部分では、Linux/OSSがビジネス要件にフィットしないこともまだある。
「たとえば、帳票のけい線をきっちりキレイに印刷するといったことについては、日本人技術者の感性が非常に適していると思っています。またシステムにバグがあることが判明した場合、その原因究明や修正についても、日本人は非常に優れています。そうした技術に対する感性を実装したいのです」(同氏)
海外の技術者に比べて物静かと言われる日本人技術者の感性をシンポジウムを通して、発言していってほしいという思いも工内氏にはあるのだ。
日本人技術者開発の機能がカーネルに実装
日本で開催するシンポジウムが目指すものをいかに実現しているかというと、Linuxのトップメンテナーを講演者としたセミナーや日本人技術者による成果報告を開催しているのである。またそうした場では、できるだけ双方向の議論を展開するために、セミナーに加えて議論の場所として「Birds of a Feather」(BoF)も同時に開催している。