半導体:2009年最大顧客はHP、アップルとエイサーが前年より成長

富永恭子(ロビンソン)

2010-02-05 10:47

 ガートナー ジャパンは2月3日、米Gartnerが1月21日に明らかにした半導体業界の需要に関する速報を明らかにしている。Gartnerの推定では、主要な電子機器製造業者10社が773億ドルもの半導体需要を支えており、これは全半導体需要の3分の1を占める計算になるという。

 ガートナー ジャパンのシニア・リサーチ・アナリストである山地正恒氏は「電子機器産業のサプライチェーンは複雑化し、受託設計製造企業(ODM)の重要性は高まり続けている。しかし半導体需要の上位10社はすべてブランド企業(OEM)であり、これら有力OEMが半導体需要全体の3分の1を占める。半導体需要は2008年に続き2009年も依然として世界の主要なOEMによって支えられている」と説明する。その上で山地氏はこうコメントする。

 「半導体デバイスベンダーは主要な電子機器ブランド企業に対して、より一層の注意を向けるべき。そして、どの顧客が市場トレンドをとらえ、どの顧客が将来的に生き残っていくのかを見極める必要がある」

 半導体デバイスベンダーの2009年最大の顧客、つまり半導体需要世界第1位は、Hewlett-Packard(HP)だ。デスクトップやモバイル、あるいはミニノートブックといった市場セグメントにかかわらず、HPはPC市場のシェアを伸ばしている。2009年のサーバやストレージ市場全体は非常に厳しい状況にあったものの、HPは同市場でも存在感を示したという。

 また、半導体需要世界第2位のSamsungは垂直統合型メーカーとして世界で最も成功している企業だと、ガートナーは評価している。Nokiaは全世界、特に米州の携帯電話端末市場のシェアを失い、半導体需要は前年の世界トップから第3位に後退している。

 上位10社のうち、AppleとAcerだけが2008年から半導体需要総額を伸ばしている。Appleの業績伸長の背景には、ハードウェア志向からサービス志向へと市場トレンドが移行していることがあるという。半導体デバイスベンダーにとってAppleは、PCや携帯電話、そして民生機器の各市場のいずれでも成長性という点で最も魅力的な顧客の1社だとしている。

 AcerはミニノートブックPC市場のみならず、デスクトップPCやモバイルPCなど既存市場でもシェアを拡大し、半導体の需要を大きく伸ばし、2008年の11位から2009年は9位に躍進している。ガートナーではPCの需要が“高性能”から“携帯性”や“低価格”といった方向に移行しているとし、こうした傾向がAcerの2009年の成長を後押ししたとみている。

表 世界のOEM/ODM半導体需要ランキングトップ10
(単位:億ドル、出典:ガートナー)

 山地氏は「総じて、1年前に懸念していたほど半導体市場は落ち込まなかった」と分析。ODMは、2008年末に始まった景気後退に対処すべく、2009年の上半期を通して生産量や在庫の調整に努力した。半導体需要はそれが一巡した2009年の後半から徐々に回復しているが、そのペースは市場セグメントによって一様ではないという。

 Gartnerによれば、PC市場向けの半導体需要回復は堅調。これは、ミニノートブックPCが新興国だけではなく先進国でも販売が好調であること、DRAMの価格が2009年後半から落ち着きを見せていること、そして「Windows 7」という新しいOSがリリースされたことなどが主な理由だとしている。

 しかし携帯電話端末、特に“エンハンストフォン”と呼ばれる分野の携帯電話端末向けの半導体需要は大きく落ち込んだ。一方、スマートフォン向け半導体需要は大きく伸び、2008年の携帯電話端末向け半導体需要のシェアは19.8%であり、それが2009年には28.6%と伸びているとしている。

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