IDC Japanは2月25日、2010年の「国内注目EA(Enterprise Applications)ソリューション市場ユーザーニーズ動向調査」の結果を発表した。2009年に冷え込んだ製造業のEA投資は、「生産管理」「在庫管理」を中心に今後2年以内に回復すると予測している。今回の調査は、従業員10人以上の国内民間企業および政府、自治体の1100法人を対象に行われている。
同調査によれば、2009年12月時点でのEAシステムの導入率はマーケット区分ごとに、CRMが48.4%、ERM(財務会計、人事給与、販売管理、購買管理、設備保全管理)が88.7%、SCMが58.3%、製造が59.1%、BA(Business Analytics)が37.5%だったという。現在のEAシステムの導入方法では生産管理、生産計画、在庫管理、製造実行システムで「自社開発」の回答比率が3割を超えており、なおかつSCMシステムおよび製造システムでは、1999年以前に構築されたシステムが3割を超える回答結果だったとしている。このことから、SCMや製造システムは他のシステムに比べて自社開発の古いシステムが多く残っていることが見て取れるという。
一方、2年以内に導入予定または導入検討しているEAシステムについては、「生産管理」が最も回答率が高く82.4%、続いて在庫管理が75.5%、以下財務会計、人事給与、SFA(営業支援)と続き、2009年に大きく落ち込んだ製造業のソフトウェア投資が回復する兆しを見せているという。
2年以内に導入予定または導入検討するEAシステムの構築方法に関しては、各EAシステムで「パッケージ(カスタマイズ含む)」の回答率が6割を超えている一方、自社開発とSaaSもしくはアウトソーシングが10%前後となり、企業の基幹業務および経営分析ソフトウェアは、今後もパッケージを機軸とした選定が今後も中心になると分析している。
また、IDCは、CRMシステムの導入目的が顧客情報管理から顧客分析へとシフトし、業種業務ノウハウを付加価値としたCRMソリューションのニーズが高まるともみている。同時にCRM、ERM、SCM、製造の各業務アプリケーションと会計アプリケーションは、「同一パッケージ(ERPスイート)または同一ベンダーが提供する製品が良い」とする回答率が6割前後に至っているという。この結果からも基幹業務のサブシステムと会計システムの統合ニーズが高まっていることが見てとれるという。また、パッケージで構築されたEAシステムは財務会計、人事給与で専業パッケージの回答率が6割超、その他の業務ではERPスイートにおけるモジュールの回答率が高い結果となったとしている。
IFRS(国際財務報告基準)対応で期待される会計ソリューションについて調査した結果、経理方針の設定や内部統制対応に着手をしている企業はIFRS対象企業の4割を超えているが、システム対応や運用体制は、着手がやや遅れ気味で、2012年の段階で着手済みの企業が7割程度になると見込まれている。現時点ではIFRSへの取り組みは横並びの様子見感が否めないという。
しかし、現在会計システムをERPまたは自社開発で構築している企業は、「IFRS対応についても現在の延長線上で対応する」という回答が4割を超えているのに対し、専業パッケージで会計システムを構築している企業は、IFRS対応を機に会計システムの見直しを模索する企業が増える傾向にあるという。
さらにIDCでは、製造・流通のグリーンSCMに対する取り組みは積極的とはいえず、グリーンSCMの全体最適でコストを削減するためには、企業の壁を越えたイニシアチブとリーダーシップが必要だとする。温暖化対策、CO2削減対応で、様々な「エコ対応製品」が上市されているが、製造や流通のグリーンSCMに対する取り組みについて調査した結果、電気・機械、製薬で製造過程の見直しが進んでおり、移動距離の見直しやサービスレベルの見直しは自動車・自動車部品、電線・非鉄・金属で進んでいることが判明したという。グリーンSCMに対する取り組みは不景気の影響もあり、実施している企業はまだまだ少数にとどまっており、経営者のトップダウンやトータルコストの削減などが、グリーンSCMを実行する上で重要な要素となるとしている。
同社ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャーの赤城知子氏は、今回の調査結果について「国内企業のEAシステムの導入率は年々高まっており、市場は新規需要から更新需要へとシフトしている。特に大手企業で更新需要の比率が高まっているが、複数の業務系サブシステムの統合化や分散したソフトウェア製品の統合化など、更新需要は既存のソフトウェア製品の延長線上で更新されるとは限らない」とコメントしている。