業界標準とされるx86サーバの性能向上や価格低下が進むにつれ、インテルのItaniumをベースとしたUNIX系サーバの存在感が薄れていると言われつつある企業向けシステム市場。IDC Japanの調査においてUNIXサーバの国内出荷金額で2009年第4四半期にトップシェアとなった日本ヒューレット・パッカード(日本HP)としては、存在感が薄れていると言われて黙っているわけにはいかない。同社は記者向け説明会を開催し、ミッションクリティカルシステムにおけるItaniumサーバの重要性を語った。
日本HP エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ビジネスクリティカルシステム事業本部 製品マーケティング本部 本部長の上原宏氏は、サーバの投資について「TCO(総所有コスト)と信頼性および性能を考えた場合、コストが低くて性能の高いサーバを購入すれば夢の世界が広がると思いがち。x86サーバはまさに低コストで高性能だと言われているが、実は導入してみると管理や保守に思った以上に時間がかかり、初期導入費が抑えられてもトータルで見るとコスト高となるケースも多い」と話す。
これはCPUに限った話ではない。OSでも同じことが言える。Windowsは頻繁に攻撃の対象になるため、脆弱性が発見されることも多い。そのため、パッチをあてる作業負担が大きくなりがちだ。一方のHP-UXは、ほとんど攻撃対象となることがない。「この事実だけでも、どちらの管理コストが大きいかは明白だ」と上原氏は強調する。つまり、ミッションクリティカルシステムにおいてはItaniumベースのUNIXサーバが適切だとし、「最大の投資対効果を得るためには、適材適所を意識することが大切だ」と説明する。
実はItaniumは、クロック数がそれほど高いプロセッサではない。2月9日にインテルが発表したばかりの「インテル Itanium プロセッサー 9300番台」(開発コード名:Tukwila)も、9350番のクロック数1.73GHzが最高値だ。どうしてもクロック数に目がいくCPUの世界だが、日本HP エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ビジネスクリティカルシステム事業本部 製品マーケティング本部 製品企画部 担当マネージャーの山中伸吾氏によると、Itaniumはクロック数を上げずにパフォーマンスを向上させることを目標に開発されたプロセッサだという。「超並列処理によって複数のCPUコアが効率よく処理できるよう、仕事全体をコンパイルしているため、クロック数が低くても性能が高い。もちろん、クロック数が低いということは消費電力が抑えられていることを意味する」と山中氏は説明する。
HPではx86サーバも取り扱っており、UNIXサーバのみをアピールしようとしているわけではない。山中氏は「新幹線と飛行機のどちらが速いかを考えてほしい。スピードだけを見ると飛行機が速いのは明白だが、例えば東京、大阪間で全員が飛行機を利用するかというとそうではない。都心からのアクセスのしやすさや最終目的地がどこかを考慮すると、必ずしも飛行機が一番速いとは言えないはずだ」と話す。つまり、速度だけにとらわれず、ここでも適材適所に適切な方法を選ぶことが重要だというのだ。
厳しい経済環境の中、企業は初期コストがかからないことでx86サーバに注目しがちだ。Itaniumはもうなくなってしまうのではないか、UNIXサーバに将来はないのではないかとささやかれていることも、日本HPでは認識している。しかし、IDCではItaniumサーバの出荷台数が年々増加すると予測しており、インテルも3世代先までのItaniumプロセッサのロードマップを公開している。また、HPでもインテルの将来のItanium発表にあわせ、Itanium搭載サーバやItanium対応のHP-UXを引き続き提供していくとしている。「適材適所を考えると、UNIXサーバが必要な領域は必ずある。メインフレームの置き換えとしても今後UNIXサーバの採用は加速するだろう」と日本HP エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ビジネスクリティカルシステム事業本部 製品マーケティング本部 製品企画部 部長の栄谷政己氏は述べ、UNIXサーバに将来性がないという意見を真っ向から否定した。