マネージャーが自分についている10のうそ

文:Steve Tobak 翻訳校正:石橋啓一郎

2010-05-06 07:00

 われわれはみな、自分にうそをつく。なぜかは分からない。それが何を意味するかは分からないが、おそらく、自己欺瞞は人間の条件なのだろう。有能な精神科医であれば理由を説明できるのだろうが、面倒な精神医学的解説が必要な人などいないだろう。

 私がこのことについて考えさせられたのは、Michael Finney氏の消費者問題を扱うラジオ番組で、高すぎる買い物をする人たちが自分自身につく5つのうそを説明していたのを聞いたときのことだ。挙げられていたのは、「もっと高いものもあるのだから、これを買ったことで節約できているのだ」「これは投資だ」「いいことがあったので、これは記念だ」「悪いことが起きたので、自分を慰めるのだ」といったようなものだ。

 問題はこうだ。自分自身にうそをつけば、自分を傷つけるし、最悪の場合には家族も傷つける。しかし、マネージャーの場合には、問題は異なる。マネージャーが自分自身にうそをつくと、ずっと多くの人が傷ついてしまうのだ。地位が高ければ、それだけ多くの人間が傷つく可能性がある。最高経営責任者(CEO)は、何千人もの株主、従業員、顧客を傷つけてしまうかも知れない。会社そのものを倒産させてしまう可能性もある。私は、自己欺瞞に陥った経営者が、かつては素晴らしかった企業を破壊するのを何度も見てきた。残念だが、そういうことは実際に起こる。

 しかし、マネージャーも人間であり、間違いをしても許されるではないだろうか?その通り。間違いは誰にもあるだろう。しかし、恐ろしい真実から逃げるために、自分を慰めたり、自分の壊れやすい自意識を守ろうとしてうそをつくとなれば、これはまったく別の話だ。

 私の話は、怒っているように聞こえるだろうか。だとしたら申し訳ない。この話題がそれだけ痛いところを突いているということだ。

1.自分は顧客が求めるものを知っている。

 CEOは、自分が顧客の求めるものを知っていると考えていることが多い。実際には、知らない。CEOは、自分の求めているものを知っているだけであって、彼らは普通、ターゲット層に含まれてさえいないのだ。

2.われわれは最高の○○を持っている。

 ○○には、技術、マーケティング、顧客サービスなど、さまざまなものが当てはまり得る。これは自己欺瞞的なたわごと、傲慢さ、エゴの表である場合が多い。

3.問題は自然に解決するだろう。

 これは、痛みになることをやりたくないときに使われる。

4.顧客はわれわれを支持してくれている。

 これは普通、自分が知りたくない真実を知らずに済むように、聞きたくない質問をしない言い訳に使われる。

5.私は従業員に人気がある。

 前項に同じ。

6.くさいものには蓋。

 問題を無視する、隠蔽する、存在自体を信じないことによって、それを解決するの意。

7.おそらくそれが本人のためだ。

 「彼らは自分の力でやっていくはずだ」というものもある。これは、誰かを降格したり解雇したりする場合や、一時解雇が行われる場面で使われる。

8.結果が手段を正当化する。

 他人に何かひどいことをしてしまったとき、自分を正当化するのに使われる。

9.役員たちがどうしたいかは知っている。

 おそらく知らない。ただ、聞くのを怖がっているか、自分が他人に上回られるのを恐れているだけだ。

10.これは私の会社だ。

 小さな会社では、これが正しいことも多い。しかし、大企業のCEOともなれば、これが正しいことはほとんどあり得ない。では、なぜそんな言い方をするのか。私には分からない。エゴの拡大なのだろうか。

 では、問題を解決するにはどうしたらいいだろうか。もう分かっているはずだ。もしあなたが経営者なら、とにかく自分にうそをつかないことだ。行動を起こし、真実と向き合うべきだ。取締役なら、自己欺瞞的な他の役員に気をつけること。甘いうそを聞くのが好きなディレクターには、そう、「来世はNBCの役員に生まれ変わるぞ!」と脅しておこう(訳注:近年、米国のテレビネットワークであるNBCは経営難に陥っている)。

 とにかく、ここには私のうそを10個挙げたが、他にも何百といううそがあるに違いない。読者にも、自分がついているうそがあるはずだ。コメント欄で教えて欲しい。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ

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