破格の報酬は口止め料ではない
野副氏が破格の報酬で相談役を打診されたのは口止め料と主張したことに対しては、「内規があり、期間や報酬、その他の条件は基本的にルール通り。一部特例としたのは、野副氏が任期途中の辞任であったことから、その期間だけは従来の報酬を支払うことで、ルール通り減額されることになっていた」とした。
さらに、「元社長との問題なので、もう少しうまく話し合えなかったのかとも思われるだろうが、野副氏は話し合う余地もなしに、一斉にマスコミに情報を流し、裁判を提起し、報道が収まると記者会見をやるなど、常に問題を大きくする方向で行動した。妙な話し合いをせずに毅然と対応するしかないと判断し、今日に至っている」と説明した。
また、「野副氏の問題は事業とは切り離し、今後も毅然として対応していく所存であり、山本新社長の執行体制には影響を及ぼさないよう最大限の努力をしていく」としている。
小倉監査役は、「病気を辞任理由にしたことについては、若干の違和感はあったものの、本人と合意の上であり、やむを得ないプロセスであったこと、法的に違法性のあるものではないと判断したことで承認している」とした。
山本社長は、野副氏の質問に対して次のように回答した。
「外部調査委員会は、野副氏が虚偽の事実の原因追究のために設置を求めているものであるが、富士通の認識は、野副氏が指摘するような事実はないというもの。司法の判断を求めるものであり、地裁、高裁ともに当社の勝訴であり、外部調査委員会を設置する必要はない。秋草氏が相談役に留任することについては、社長としての経験、知見、人脈は会社の財産である。それは会社にとって大きな意味を持つものであり、相談役としてそれを生かしていただく」(山本氏)
社外取締役の野中氏、一社の利益を超えた社会的問題と指摘
質疑応答では、取締役選任に関して、一部役員の選任に反対する意見や、秋草氏の相談役の辞任を求める声、野副氏を社長に任命した責任を追求する声が上がる一方、「野副氏の件は、発言するたびに富士通のイメージダウンになっている。富士通は毅然とした態度でやってもらいたい。秋草氏の貢献を考えると取締役を辞任するのは仕方がないが、相談役をやめさせることは適切ではない」「富士通経営陣の判断は適切であった」などの声も上がった。
また、長時間の野副氏に関する説明に対して、「争いの話をする必要はない。仲間内で争うのはどうでもいい。どう利益を確保するのかが問題。また、ガバナンスの観点が問題である。ファナックの株式売却の利益がなかったら、富士通の利益はなかった。もっと株主のことを考えるべきであり、社員は一生懸命に働いている」などの声も上がった。
質問に対して、取締役の大浦溥氏は、「野副氏を任命した人は悔しい想いをしている。これは業績で示すしかない」としたほか、「秋草氏は、昨年の段階で取締役を辞任する意向を示していたが、野副氏の問題があったことで、私や監査役などが、問題が解決するまで取締役にいてもらうように望んだ」といった事実を初めて明かした。
社外取締役の野中郁次郎氏は、「野副氏は経営者として変革に取り組むという点では優れた人物であるが、今回の問題は、ひとつの企業の利益の問題を越えて、富士通の社会的存在が問われるものであった。その上で、判断したもの」と回答した。