北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は7月1日、富士通と共同で学内プライベートクラウドを構築したと発表した。同システムは、全学システムとして約4カ月で構築され、学内の学生、教職員、事務職員約1500人に向けて3月より順次サービスの運用を開始しているという。
JAISTは、2006年から学生、教職員、事務職員が使うパソコン端末のシンクライアント化を進め、一元管理されたサーバ約120台を用いた学内ICT環境を構築している。一方で、稼働率の低い個々のサーバの有効活用、多数あるサーバの管理コスト軽減のため、仮想化技術を中心としたサーバ環境のクラウド化に注目し、数年間、小規模環境での検証を実施していたという。その結果、富士通のブレードサーバ「PRIMERGY BX920」51台とサーバ仮想化ソフトウェア「VMware vSphere 4 Enterprise」を組み合わせることにより、学内プライベートクラウド環境を構築することを決定した。富士通のPCサーバ120台を、仮想化技術で30台に集約し、また、主に研究分野で活用する業務用のサーバを21台構築して、すべてのサーバを一元管理した。
今回、大学内においてサーバとソフトウェアを一元管理することにより、研究時に必要なリソースの管理と提供が可能になり、学生や教職員は最適なコンピュータ環境を柔軟に利用できるようになったという。また、すべてのサーバを、学内のクラウドのマネジメントシステム上で管理できるため、サーバの更新、OSやソフトウェアのバージョンアップなどを、一括で容易にできるようになったとしている。さらに、省エネ効果についても、消費電力48%削減など、年間で最大120トンのCO2削減(杉の木8571本分)が見込まれているという。
同サービスでは、学生や教職員が、先端科学技術分野の研究など、使用目的や期間に合わせて必要な時に必要なコンピュータ環境をプライベートクラウド内で利用できる。また、仮想サーバ間でのリソースを共有できることから、稼働率を高めることが可能だという。さらに、学内にプライベートクラウド環境を構築したことにより、研究成果などの重要情報を学内で保管することができ、評価や調整に要する時間を短縮できたとしている。
JAISTは今後、学内プライベートクラウドの対象範囲を、図書館蔵書管理システム、学務システムなどの業務サーバへも拡大するなどの展開を検討している。また従来、学生と教職員でサーバ使用の繁忙時間帯が大きく異なっていたことから、平均稼働率が10%を下回っていた研究開発用のコンピュータ環境について、低稼働時のリソースを科学技術計算などに有効活用することでサーバ稼働率を90%へと高め、投資効果の最大化を図る予定だ。