IDC Japanは7月20日、2010年第1四半期(1月〜3月)の国内IT市場の実績と、最新の景気動向などに基づく国内製品別IT市場予測を発表した。
IDCによると、2010年の国内IT市場は、市場規模が12兆3530億円、前年比成長率は2009年のマイナス11.1%から大幅に改善し、0.5%と3年ぶりのプラス成長を予測している。また、景気回復に伴い2011年以降もプラス成長が継続し、2014年の市場規模は12兆4618億円と予測。2009年〜2014年の年間平均成長率はプラス0.3%となるとみている。
国内IT市場を構成する「ハードウェア市場」「パッケージ ソフトウェア市場」「ITサービス市場」の3つの市場別予測のうち、2010年のハードウェア市場の市場規模は5兆1892億円、前年比成長率2.3%で、3年ぶりのプラス成長を達成すると予測している。この背景には、Windows 7の登場によりPCの需要が高まっていることや、クラウドコンピューティングの需要拡大を見越して、情報サービス業がx86サーバへ積極的な投資を行っていることなどが要因としてあるとIDCではみている。ただし、単価下落傾向やローエンド製品への需要シフトなどのためにこの好調も長続きはしないという。2011年以降は再びマイナス成長に戻り、2009年〜2014年の年間平均成長率はマイナス2.2%、2014年の市場規模は4兆5449億円とIDCは予測している。
2010年のパッケージ ソフトウェア市場については、前年比成長率0.6%、市場規模は2兆2075億円になると予測。IDCは、延伸されていたサーバやPCのリプレースメントが景気回復に伴い再開され、オフィススイート、DB、ERM、BI、OS、仮想化ソフトウェアなどの需要が戻ってきているとみている。また、今後もIFRS対応、データ活用のニーズ、クラウドコンピューティングの普及などにより、ERM、BI、仮想化ソフトウェアなど幅広いソフトウェア製品の需要が続くとIDCでは見込んでおり、2009年〜2014年の年間平均成長率はプラス2.2%、2014年の市場規模は2兆4429億円になると予測している。
2010年のITサービス市場は、市場規模が4兆9563億円、前年比成長率はマイナス1.3%と予測。IDCでは、ITアウトソーシングは堅調なものの、SIを中心に需要が十分には回復していないことがマイナス成長となる原因だとしている。ただし、2011年以降はユーザー企業のIT投資回復に伴いプラス成長に戻るとIDCは見込んでいる。プライベートクラウドの構築、SCMの再構築、IFRS対応、BIへの投資、スマートグリッドおよびスマートシティ実現のためのSI案件などが市場をけん引。それに伴い、ITアウトソーシングも成長力が高まるとみており、2009年〜2014年の年間平均成長率はプラス1.7%、2014年市場規模は5兆4741億円になるとIDCは予測している。
一方で、6月に政府のIT戦略本部が高い目標を掲げて発表された「新IT戦略」の工程表は、予算がまだ明確になっていないなど今後の具体化が待たれるが、大いに期待される内容だという。IDC Japan ITスペンディング ITサービス ソフトウェア&セキュリティ コミュニケーションズ グループディレクターの和田英穂氏は「新IT戦略はPDCAサイクルを導入しており、以前の戦略より実効性が高いと思われる。ITベンダーは、自社の事業戦略に組み込み、積極的に対応することが重要だ」とコメントしている。