富士通は8月9日、協和発酵キリンと共同で、創薬研究業務の新システムとして、創薬研究基盤「電子実験ノートシステム」を構築したことを発表した。新システムはわずか4カ月で構築され、薬の候補物質となる化合物の合成実験を行う協和発酵キリンの合成研究部門において本運用が開始されている。
協和発酵キリンでは、抗体技術を核とする最先端のバイオテクノロジを駆使した新薬の開発に取り組んでいる。より高レベルな新薬をコストと期間をおさえて開発するために、薬の候補物質となる化合物の合成実験を行う合成研究部門において、現在紙で管理している実験の手順や結果、化合物の構造式などの実験情報を共有し、ナレッジを活用しつつ開発スピードを向上させること急務となっていたという。
新システムは、米CambridgeSoftの電子実験ノートパッケージソフトウェア「E-Notebook Enterprise」をベースに構築された。合成研究部門の実験の手順や結果、化合物の構造式などの研究情報を電子的に記録、管理し、研究の内容や進捗状況を見える化し、ナレッジとして共有および活用することで高度な開発および開発スピードの向上を実現するとしている。
これにより、協和発酵キリンの合成研究者は、これまで手書きで一から作成していた合成実験の手順や実験結果、化合物の構造式などの実験情報を記載する合成実験ノートを、パソコンで過去の類似する実験情報や構造式を参照、活用しながら効率よく作成できる。また、定期報告書の作成や特許出願に必要となる煩雑な情報収集を容易に行えるという。
さらに、新システムでは、協和発酵キリンが運用する法規制化合物チェック支援システムと連携することで、電子実験ノートシステムの化合物が麻薬や覚醒剤などの法規制化合物に該当するか否かをシームレスにチェックできる仕組みを構築。このため、早期の段階で法規制化合物を確実に排除することが可能になるなど、効果的な研究開発に取り組むことができるとしている。