企業内文書やビジネス文書としてのPDFは既にポピュラーな存在だ。しかし、その使われ方の中心となっているのは、さまざまなプロセスを経て完成したドキュメントをアーカイブしておくための「最終形フォーマット」としてであるケースが多い。一方で、文書の作成、レビュー、共有といったプロセスにおいては、Microsoft Office WordやExcelといったアプリケーションの形式で文書が回覧されたり、修正されたりするケースがほとんどだ。
Acrobat Xにおいてアドビは、文書の作成、共有しての編集作業、更新管理、配信、保存といった業務プロセス全体でのAcrobat活用を訴求していく。実際に、全社規模でAcrobatを導入し、こうした業務プロセスを通じた活用を行っている企業の事例も出てきているという。同社では、こうした業務プロセス全体を通じてのPDF活用を「Acrobat Dynamic PDF」というコンセプトで示し、より大規模な企業での導入を促していく考えだ。
前出の伊藤氏は、「Acrobat 9のリリースから2年が経ち、企業のワークスタイルも大きく変わった。その中で、IT投資がビジネスの生産性に結びついていないと言われるのは、そこで用いられる文書のスタイルに原因があるのではないか。今や、ビジネス文書をデジタル文書として作成するのは当たり前。むしろ、作成した後の文書を使って、どのように業務を処理していくのかについて、新たな取り組みが始まっている」と、Acrobat Xの機能強化の方向性について説明した。
Acrobat Xにおいて用意されるエディションは、Windows版が「Standard」「Pro」「Suite」の3種類。Mac OS X版が「Pro」のみとなる。また、PDFの閲覧や印刷、検索を行える「Adobe Reader X」は従来と同様、同社サイトから11月15日以降、無料で入手できるようになる予定。
価格は、Acrobat X Standard(Win版)3万6540円。アップグレード版が1万9110円。PDFポートフォリオ機能やアクションウィザード機能などが利用できるAcrobat X Pro(Win版、Mac版)が5万7540円。アップグレード版が2万5410円。
今回初めてラインアップに加わるAcrobat X Suiteは、Acrobat X Proのほか、Photoshop CS5、Presenter 7、Adobe Captivate 5、LiveCycle Designer ES2、Media Encoder CS5といった関連ツールをパッケージにしたもの。より表現力の高い文書の作成を行いたいビジネスユーザーをターゲットとした製品で、価格は15万1200円。Suiteに含まれる各アプリケーションの旧バージョンを含む単体製品ユーザー向け特別提供版が11万145円。Suiteのパッケージ版は12月10日の発売が予定されている。