これは、いわば企業向けのApp Storeのようなものだ。企業が設定したApp StoreにiPadやPCなどさまざまなデバイスでアクセスすると、そこにはユーザーに合ったアプリケーションが用意されており、そこから必要なアプリケーションをダウンロードして使えるようになっている。そのアプリケーションは企業のセキュリティポリシーに沿って設定されているため、企業ネットワーク外からアクセスする場合は自由度が下がるかもしれないが、SaaSアプリケーションの場合はさまざまなアプリケーションをシングルサインオンで使えるようになる。つまりこれは、アプリケーション管理の新しいあり方なのだ。
ただし、Project Horizonはアプリケーションベンダーと共に作り上げていくものだ。つまりProject Horizonは、製品そのものを開発するというミッションに加え、パートナーの各製品をProject Horizonに統合してもらうよう働きかけていくことも含まれる。
--Project Horizonが市場に登場するのはいつ頃か。
リリース時期は決まっていない。現時点では、企業にヒアリングしてどのようなソリューションにすべきか練っている段階だ。ただ、このプロジェクトの構想を話すと、多くの企業は今すぐにでも使いたいと言う。適当な時期になれば数社にテストしてもらうことになるだろう。
--ところで、1月に買収を発表したZimbraだが、この製品はインフラ関連の製品が中心となって構成されているVMwareの製品ポートフォリオには合っていないように見える。
その考えは正しいとも言えるし、正しくないとも言える。確かにZimbraは、VMwareがメインで扱っているコアなインフラレベルの製品とは異なるものだ。ただ、これはわれわれが仮想ワークスペースを提供するという戦略の中で大きな役目を果たすことになる。それは、エンタープライズの分野でもコラボレーションとソーシャルメディアが重要になってくるためで、Zimbraはコラボレーションとソーシャルメディアの活用を実現できる製品だからだ。
--つまりVMwareではユーザーに仮想ワークスペース全体を提供しようと考えているのか。
われわれは、仮想ワークスペースを構成するための支援をしている。仮想ワークスペース上に存在するアプリケーションをすべて提供するという意味ではない。VMwareでは、さまざまなアプリケーションをエンドユーザーに利用してもらうためのメカニズムを提供するのだ。
--ZimbraはVMware傘下に収まったが、ほかのアプリケーションベンダーを買収したいとは考えないのか。
Zimbraは特別なケースだ。クラウドの世界で、メッセージング、コラボレーション、IDといった要素は中心的な存在になるからだ。だからこそZimbraを買収した。しかし、例えばCRMなどのビジネスアプリケーションに至っては、どうやって運営すべきかVMwareにはノウハウがない。運営方法がわからないのに買収する意味はない。
--Zimbraの販売戦略について教えてほしい。
Zimbraにとっての大きな市場は2つある。まずはサービスプロバイダーで、大規模のメッセージングとコラボレーション環境を構築し、エンドユーザーにサービスとして提供するケースだ。もうひとつは中小規模のビジネスで、信頼性が高くコスト効果の高いメールシステムを求めている企業に向けてZimbraを提供する。Zimbraの利用コストは、Microsoft Exchangeの導入と比較すると約半分に抑えられるからだ。すでにExchangeを利用している顧客には、移行を考えているユーザー以外アプローチするつもりはないが、この2つの市場を中心にZimbraを販売していく。