「IntelによるMcAfee買収はシナジー(効果)が見込めない」――。米Symantec社長兼最高経営責任者(CEO)のEnrique Salem氏は、11月30日の記者会見でこうした見解を明らかにしている。
シマンテックは12月1日にイベント「Symantec Vision Tokyo 2010」を開催。Salem氏は同イベントの基調講演で登壇する。同イベントは「TAKE CONTROL」をキーワードに、同社の重要テーマとなっている「“人と情報”中心のIT」が、イベントの底流になっている。
同社が掲げる「“人と情報”中心のIT」は、情報システムの今後を見据えたものであり、同社の製品戦略を読み解くキーワードにもなっている(たとえば仮想化製品もそうした戦略の表れだ)。Salem氏は「人と情報が中心であり、デバイス(端末)は重要ではない」と説明する。
クライアントPCに情報を蓄積していても、そのクライアントPCが壊れてしまえば、情報を引きだせなくなる。われわれが必要としているのは情報であって、クライアントPCのような端末ではないはずだ。そして必要とする情報は、どんな端末からでもアクセスできることが望ましい。Salem氏が言う、人と情報が中心のITというのは、端末と情報がひも付くのではなく、ユーザーと情報が常にひも付いている状態を指している。
ユーザーと情報が常にひも付いているという状態の延長線上にあるものとして、今後の情報システムについてSalem氏は「ビジネスとプライベートのデジタル機器が融合するだろう」と話す。どんな端末からでも使え、流出する可能性がないという状態にある情報であれば、プライベートで使っている端末で仕事をこなしてもいいはずだ。
こうした状態を担保するものとして、今後望まれるのが「シンプルで安全な情報へのアクセスへの期待」(Salem氏)である(これは、セキュリティ製品ベンダーである同社にとっては当たり前の命題だろう)。Salem氏はまた、企業を取り巻く現状を踏まえて、今後「企業の拡張性とコスト効果がさらに高まる」と予測している。
Salem氏は、情報システムの今後をこのように予測している。そうした未来像を踏まえて、重要になってくる分野として(1)個人認証セキュリティ、(2)デバイスセキュリティ、(3)情報の保護、(4)前後関係と関連性、(5)クラウド――の5つを挙げている。
Symantecと言えば、さまざまな企業を買収していることで有名だ。そのため、Salem氏は「次はどの企業を買収するのか」とよく聞かれるという。もちろん、Symantecの企業買収は場当たり的なものではなく、同社の戦略に沿ったものだ。
たとえば(1)の個人認証セキュリティのために5月にVerisignのセキュリティ事業を買収、(2)のデバイスセキュリティと(3)の情報の保護のために4月にPGPとGuardianEdgeを買収している。Salem氏は、このように同社の企業買収が戦略的に進めていると説明する。つまり、同社が重要と考える5つの分野で、今後Symantecは企業を買収していくと予測することができる(もちろん具体的な企業名までは分からない)。
ここで思い出されるのが、IntelによるMcAfee買収だ。その目的の1つとして、McAfeeのセキュリティ技術を半導体レベルで組み込むため、とされている(McAfeeはAndroid搭載スマートフォン向けにセキュリティ製品をいち早く提供している)。Salem氏は、IntelのMcAfee買収に触れて「IntelによるMcAfee買収はシナジー(効果)が見込めない」とIntelとMcAfeeの関係に疑問を示している。