懸念は「安心してシステムが使えるかどうか」
話題は仮想化への移行で不安だったことに移る。一番多かったのは、安定性への懸念だった。
「VMware(Server) 2.x時代は、安定性がイマイチという印象があった」(データセンター事業者)という感想をはじめ、「仮想マシンのうち1つをゴリゴリ動かすと、それにつられて全部が遅くなったり落ちたりもした。基幹業務にはとても使えないという思いだった」(金融)と、黎明期から仮想化技術に取り組んできたユーザーは語っていた。
この状況が変わってきたのはVMware 3.xになったころからだという。
「それまではドキドキしながら運用していた。ビジネスに使えるなという印象を持ったのは3.xになってから」(データセンター事業者)という発言がそれをよく表していた。
また「パフォーマンスはちゃんと出るのか」という点も大きな問題だ。何しろハード1台で数台から数十台のサーバを兼ねるのである。金融業界など、クリティカルな業務の多い企業では不安が続出したという。
また、先に紹介したように「レガシー環境の延命」という命題がある場合、「今あるソフトウェアがそのまま動くのか」も不安視されたという。当然のことだが、ソフトベンダーやシステムインテグレーター側では、あらゆる環境を調査しているわけではない。今でこそ、大手ベンダーを中心に仮想化環境への対応を表明しているところも多いが、かつては「対応未定、自分の責任で使ってくれ」と言うベンダーも多かったそうだ。
もちろん、サポート体制や対応ハードウェアも心配の種。
「昔はサポートが英語のメールだけというところもあった。問い合わせたが1カ月も放置されて困ったこともある」(データセンター事業者)など、日本国内でのサポート体制の不備が目立った時期もあったという。
「最初は正式に対応しているハードウェアが少なく、特に国産は全滅状態。HPとDell(の一部のモデル)しかないような状態だったので、導入に際して理解が得づらかった」という発言もあった。
パフォーマンスよりも信頼性重視で不安を払拭
導入するときにこだわったポイントについては、心配事の裏返しとなる項目が挙がった。特に「信頼性」。業務で用いるシステムである以上当然だが、特に仮想化導入ではパフォーマンスよりも信頼性重視の参加者が多かった。
他には、現在のシステムが安全に移行できるのかを気にする参加者多かった。このあたりは、仮想化以外のシステム導入でも同じだろう。他にも、トラブルシューティングがきちんとできるかにこだわったという参加者もいた。
総合すると、仮想化に対する期待は、レガシー資産の延命、物理的なサーバとスペースの節約、トラブルが起こりうるポイントの縮減にあったという参加者が多かった。コストダウンへの期待に関しては意見が分かれ、「仮想化でコストダウンできるという説は神話でしかない」という意見と、「運用コストや新しいサーバをいちいち調達するコストを考えれば安上がり」という意見があった。後者については主にSIerやISP、データセンター業者など、サーバを多数作る必要のある業種のユーザーが主張しており、業務内容や仮想化サーバの使い方によってかなり意見が分かれる結果となった。