ガートナー ジャパンは今回の地震を受けて、災害に備えた企業の事業継続管理(Business Continuity Management:BCM)に関連するレポートを公開している。今後の対策を考える上で重要な知見が盛り込まれている。また現在進行中の状況に対しても役に立つ考えやノウハウがあるはずだ。
レポートでは以下のような推奨事項がまとめられている。
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灰じんからの再起:アイスランドの火山噴火に学ぶ事業継続管理(PDF)
- 立ち往生している出張者の安全と健康を確保する。
- 重要なサプライチェーン・ロジスティクス、サービスレベル合意(SLA)や契約上の義務を確認し、製品やサービスの提供が途絶する不測の事態と、それに対する責任を、特に不可抗力の事態や運営継続に関する条項に照らして判断する。
- リモート勤務とコラボレーションの機能を見直し、拡張およびアップグレードする。
- 危機における自社の対応の有効性を検証し、危機管理計画を更新する。
- 重要な社員が休暇を取る場合、復帰の遅れに備えて、スイッチを切ったままであってもハードウェアを携行するよう要請する。
- ソーシャルメディアの活用を見直す。ソーシャルメディアは危機下において善意を育み、ビジネスを創出するのに役立つ場合がある。
- 事業中断保険を検証し、適切な責任限度と期間が保証されているかを確認する。
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2011年の展望:プログラム管理の誤りがBCMを沈没させる(PDF)
- BCM活動を必須のビジネスニーズと一致させるために、主要パフォーマンス指標(KPI)を主要リスク指標(KRI)に照らして調整し、かつBCMのメリットを経営上層部に伝える。
- 複雑、困難、かつ高額なBCMプログラム認証プロセスには、系統的アプローチをもって取り組まなければならない。また復旧プログラムについて組織レベルの認証を取得するには、(クラウドプロバイダーも含む)ITサービスプロバイダーの存在が必要である。
- 企業の緊急時一斉通信システム(EMNS)、ユニファイドコミュニケーション/コラボレーションシステム(UCC)、コミュニケーションを活用したビジネスプロセス(CEBP)のメッセージング機能をより小数のプラットフォームに統合することを検討する。ただし、まず適用可能なビジネスの使用事例に評価する必要がある。
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事業継続管理者の概要(PDF)
- BCMは、非常事態の発生後に技術的なシステムを回復させることを求められるだけでなく、リスク管理、災害復旧、業務回復、業務再開、緊急時計画、危機管理にまで及ぶ極めて重要な職務であることを認識する。
- BCMの業務は必ず経営陣の支援を得た上で進め、そのような支援があることをトップダウンで社内に周知させる。
- 必要なプロセスの変更や意識改革を組織内で円滑に進めるために、事業継続管理者には十分な地位や権限を与える。
- 事業継続管理者は、事業の中断に対してプロセス指向の予防的な全社的経営リスク管理のアプローチを利用し、テクノロジ、業界、法規制、立地に関するリスク、地政学的リスク、市場リスクなどの経営リスクを考慮しなければならない。リスクが顕在化する前に、緩和のための管理策を導入する必要がある。リスクがすでに顕在化し、災害復旧の渦中にある時には、事業を確実に回復するための計画を策定する。
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Sahana:災害時情報管理/人道的コラボレーションシステム(PDF)
- 国の緊急事態/災害管理要員は、「災害時の人道的救援活動とコラボレーションを管理する」という中核的価値提案を実現するために、無償のウェブベースの人道的コラボレーションシステム「Sahana」(日本サイト)を使用する。米国政府は、オープンソースソフトウェア(OSS)に対するしっかりとしたサポートを欠いているため、Sahanaを活用するにあたって多くの課題に直面する可能性がある。
- 山岳救助、行方不明者の捜索、避難所管理などを通常業務とする地域の緊急事態管理組織は、緊急事態が発生する前にSahanaを業務に組み込んでおく。そうすることで、捜索や救助が管理されないまま行われるという無秩序な状態を軽減できる。
- 人道支援組織は、救援物資の受け入れと配給の管理にSahanaを役立てることができる(被災者収容施設や食糧配給の管理など)。
- BCM分野のプロフェッショナルは、民間企業向け災害管理用のBCMツールとプラットフォームをすべて統合する方法として、また(地域規模などの)大規模な緊急事態の発生時に複数の当事者(民間組織と公共組織の両方)の間で災害管理活動を調整するために、Sahanaを利用できる。
- OSSプロジェクトへの参加を検討している学術機関にとって、SahanaはOSSに関する対話を活発に行う契機となる。
◇震災関連情報まとめ
【特集:東日本大震災】計画停電・支援・事業継続