銀行6行と日本IBMが共同で運営する「Chance(地銀システム共同化)プロジェクト」が、分散システム基盤効率化の新たな取り組みとして、クラウドサービス「Chanceクラウド」を開始する。5月11日に、日本IBMが発表した。同サービスの最初の提供対象業務としては「電子記録債権」が予定されており、銀行業務システムでのクラウドサービスの採用として画期的なプロジェクトとして注目されるという。
Chanceプロジェクトは、常陽銀行、百十四銀行、十六銀行、南都銀行、山口フィナンシャルグループ、三菱東京UFJ銀行および日本IBMが共同で運営している。三菱東京UFJ銀行より提供される情報システムの参加地方銀行(参加行)による共同利用を基本とし、これに参加行の共通ニーズおよび個別ニーズを反映させた「地銀共同化システム」を構築、運用しているという。
今回のChanceクラウドは、同プロジェクトの一環として、今後も増加が予想される分散システム基盤の更なる効率化、コスト圧縮を目的にしたもの。4月からプライベートクラウド環境の構築を開始し、8月からChanceクラウドを開始する予定としている。
Chanceクラウドは、プライベートクラウド環境におけるPaaS型のサービス。ハードウェア、ソフトウェアなどのIT資源を、日本IBMのデータセンターからネットワーク経由で提供し、使用量に応じて課金するもので、システム基盤の運用、保守、管理についてもサービスとして提供するという。プライベートクラウドのメリットである高いセキュリティと、パブリッククラウドのメリットである従量課金、共同利用によるコスト圧縮を両立できる点が特長となる。
具体的には、OSやミドルウェアなどの各種パラメータを標準化して設定しておき、その設定を選択するだけで仮想サーバを起動できる仕組みを確立するほか、仮想化テクノロジの採用と基盤共通化によるIT資源効率の向上、標準化設計に基づく個別業務単位での設計、開発負荷の抑制を図るという。
また、将来的な稼働アプリケーションの特性、重要度に応じたサービスレベルを設定し、提供するIT資源の拡張及び縮退への柔軟な対応を実現するとともに、利用度に則した課金とすることで、サービス品質の確保と同時に参加行におけるIT投資の最適化を図るとしている。
Chanceプロジェクトでは今後、Chanceクラウドを他の業務システムにも随時拡大し、金融業務システムの標準化されたオープンなシステム基盤の試金石として発展させ、クラウドサービスの充実を図っていく計画だ。