福島第一原発の事故は人災だ――クオリティソフトの取締役兼ビジネス企画本部 本部長 平居透氏は、「ZDNet Japan 事業継続フォーラム」でこう断言した。
未曽有の被害をもたらした東日本大震災の余波はあと数年は続くと見られている。中でももっとも深刻なのは、福島第一原発の事故による放射能汚染だ。平居氏は「複数系統の外部電源など原発施設が本来備えているべき冗長化構成をとっていれば、この大惨事は防げた可能性が高い」と言う。
そして冗長化構成の重要性は情報システムにおいてもまったく同じだと同氏は強調する。
「壊れたときどういうことが起こるのか――その事態を想定し、すみやかな復旧を可能にする冗長化構成を取ることが重要になる。その重要性は大企業でも、中堅中小企業でも変わらない」
SMBに必要なBCPは“バックアップ”だ
東日本大震災をきっかけにBCP/BCM(事業継続の計画と管理)に真剣に取り組む企業が増えてきたのは周知の通りだ。しかし、これまでの実情を振り返ると「日本の上場企業でBCPに取り組んできたのは3割、定期的に見直している企業はそのうちの4割」(平居氏)だという。
つまり、約1割強の企業しかBCP/BCMに「慣れていない」ということになる。
実際に災害や事故が襲ってきた場合、ふだんやり慣れていない作業をすみやかに行うことはむずかしい。平居氏は、今の日本企業、とりわけITに予算や人員を割けない中堅中小企業に必要なBCPは、「いざというときに直前の状態に戻せるバックアップ」だと定義する。
バックアップの戻し方がわからない!
東日本大震災の直後、物理サーバが破損したため、バックアップテープからデータをリストアしようとした。だが、戻し方がわからない。IT担当者は交通機関がストップしていて通勤できない――こんな冗談のような話が、実際に数多くの企業で起こった。
平居氏は「日々のバックアップに加え、障害時の復旧をセットで意識してほしい。そしてこれを機会に中堅中小も仮想サーバへの移行を真剣に検討すべき」とアドバイスする。
日々のバックアップと障害時の復旧を同時に実現するバックアップ方式を「CDP」(Continuous Data Protection)と呼ぶ。CDPを採用すると、バックアップとレプリケーションが1つの仕掛けで可能になる。IT担当者の負荷も大幅に軽減されることになるだろう。
クオリティソフトは、CDPを取り込んだアプライアンス「Quality Quick Recovery」を提供している。リアルタイムでイメージバックアップを行い、リストア時もイメージで戻す。最初の同期を行った後は自動で差分をバックアップするため、バックアップにかかる時間も短くて済む。また、ウェブコンソールから簡単に作業できるため、IT担当者が出社できないような事態になっても、一般ユーザーによる操作が可能だ。また、アプライアンスであるため、中堅中小でも導入が容易というメリットも大きい。
もっとも、BCPとはバックアップに限らない。クラウド、節電、在宅勤務を支援するリモートオフィス、そしてペーパーレス化もBCPの重要な要素だと平居氏は言う。
それでも、何か大きなアクシデントが起こった際、まず最初にすべきことは、原状へのすみやかな復旧だ。バックアップからリストアへという流れをどれだけ迅速かつ正確に行うことができるのか、規模にかかわらずすべての日本企業が真剣に取り組み、自社にあったソリューションを選択する必要がありそうだ。
この講演のビデオ:バックアップとレプリケーションがひとつになったBCP
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