3月11日に発生した東日本大震災は、我々に多くの課題を突きつけた。ビジネスの現場にいる人間が震災であらためて実感したことは、たとえどれほど想定外のアクシデントが起ころうとも、ビジネスは決して止めてはならないということではないだろうか。
仮にオフィスが壊滅的な被害を受けたとしても、どこからでも業務を再開、継続できる仕組みを確立しておく——いま、多くの日本企業がこの仕組みづくりに真剣に取り組み始めている。
「労働市場のボーダレス化はグローバルで進んできている。インターネットやクラウドの浸透が国境をぼやけさせ始め、これに伴い、エキスパートがすぐに寄り集まり、仕事が終わればすぐに解散、という柔軟な組織活動が製品開発の現場でも見られるようになった。シスコではこうした労働環境の変化に対応すべく、“どこでもオフィス”のインフラ整備に力を入れてきたが、これが震災時に大いに役に立った」
6月22日に開催された「ZDNet Japan事業継続フォーラム」でこう語ったのは、シスコシステムズ ボーダレス ネットワーク セキュリティセールス シニア プロダクト セールス スペシャリスト 塩月裕朗氏だ。震災以前から顕在化してきた「働き方の変化」に加え、この震災であらためて「どこでもオフィス」の重要性が明らかになったという。
どこでもオフィスに必要な5つのテクノロジー
シスコでは企業がどこでもオフィスを実現するためには、5つのテクノロジーが重要になってくるとしている。
- テレワーク用VPN
- セキュアモビリティ
- グループウェア
- シンクライアント
- ユニファイドコラボレーションシステム(ウェブ会議、ビデオ会議、IP電話など)
このうち、日本企業にとって最も気になるポイントは2のセキュアモビリティ——すなわち自宅やオフィス外からアクセスする際に重要となるモバイルデバイスのセキュリティの確保ではないだろうか。
ここ最近、ソニーなど有名企業のサイトがクラッキングされる事件がグローバル規模で相次いでおり、IT担当者は情報漏洩の危険性から解放されることがない。シスコの調査でも「スパムの数自体は減っているが、特定の企業を狙うターゲット型スパムや、新種マルウェアの増大や多様化、感染源の拡大など、既存のソリューションでは感知しにくい攻撃が増えている」(塩月氏)という分析がなされている。
オフィスでさえ並のセキュリティ対策でも安心できないというのに、強固なセキュリティ対策を取りにくい自宅や外出先のモバイルPCをいったいどう守ればよいのか。このセキュリティをたしかなものにしなければ、どこでもオフィスは実現がむずかしい。それは、近い将来にやってくるかもしれない首都圏直下型の大地震に襲われたとき、ビジネスの再開と継続が困難になることを示す。
ボーダレスネットワークの流れは止められない
シスコはどこでもオフィスを安全に実現するためのソリューションとして多くの製品ラインナップを抱えているが、セキュリティ面でベースとなっているのが「Cisco Security Intelligence Operations」(Cisco SIO)だ。
Cisco SIOは、70万台以上のセンサーを通じて脅威情報収集し、それをルール化したセキュリティエンジン。未知のマルウェアにも対抗できるプロアクティブかつリアルタイムな防御システムをユーザーに提供するとしている。従業員がどこからアクセスしてもスパムやマルウェアから守り、また従業員による情報漏洩からも企業を保護するというものだ。
シスコでは、もはやボーダレスネットワークの流れは止められないと見ている。震災は日本から多くの人命と財産を奪い去ったが、これをきっかけに我々は否応なしに新しいビジネスの潮流に向き合うことになった。
これまで、どこかよその世界の話だった、オフィスを必ずしも必要としない「新しい働き方」——もしかしたらそれこそが日本復興の原動力となるかもしれない。それを安全に実現するソリューションがすでに存在するのであれば、検討してみる価値は十分にある。
この講演のビデオ:セキュアな「どこでもオフィス」が、日本復興のカギになる?
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