旅費や経費精算をクラウドサービスとして提供する米Concurが、日本市場への参入を果たした。
米Concurを筆頭株主としつつ、Salesforce.comのCEOであるMarc Benioff氏と、Salesforce.com日本法人の設立と活動に資本・事業の両面で深く関与したサンブリッジが少数株主として名を連ね、合弁会社として株式会社コンカーを設立した。
日本法人設立の背景やコンカーの事業について、米ConcurでEVP & General Manager, Asia Pacificを務めるMichael L. Eberhard氏、コンカー執行役で最高技術責任者を務める佐山宇宏氏、そしてサンブリッジ代表取締役会長兼CEOのAllen Miner氏に話を聞いた。
マーク・ベニオフとサンブリッジが少数株主
先述した通り、コンカー日本法人は米Concur、Marc Benioff氏、サンブリッジの3者による合弁で設立された。Eberhard氏は、「日本でグレートな企業になるためには、グレートなパートナーが必要だった」と述べる。
「そのため、パートナーにはきちんとしたトラックレコードが必要だ。日本企業に対してソリューションを提供していくために、手助けしてくれるパートナーでなくてはならない。その意味で、サンブリッジは素晴らしいトラックレコードを持っており、経験も豊かだ。コンカーが日本で成功するために必要な能力を持っていると思えたため、我々は100%(の資本)を持つことにこだわることがなかった」(Eberhard氏)
Miner氏は、日本での事業を支援するだけではなく、本社の正しい意思決定を支援する存在として、マイノリティパートナーの重要性を訴える。特に外資系企業が日本進出で失敗する事例を多数目撃した経験から、「日本で変化が必要なとき、あるいは日本で新しいチャレンジを遂行する場合、米国本社が下す意思決定はしばしば誤ったものになる」と、苦笑交じりで問題点を指摘する。
「マイノリティの株主がいることによって、日本固有の重要な決定に関しては、パートナーが責任を持つ。そんなコンビネーションで進めた方がいいというのが、私の信念だ」(Miner氏)
「私は、親会社の経営陣のコミットメントも必要だが、ローカルの事業をきちんと理解できるパートナーの存在も非常に重要だと思っている。サンブリッジは単なるディストリビューターになりたくはなかったし、米国の企業が単独で日本に参入し、痛い目にあう姿もみたくはなかったのだ」(Miner氏)
また、Miner氏によると、Marc Benioff氏が出資した背景は意外な人脈にあるようだ。
「Marcは、実は不思議なくらい、僕たち以上に日本の政財界のトップと直接的なつながりを持っている(※1)。2、3年後にコンカーの日本法人がトップにアクセスする必要が出たときには、実は僕のネットワークよりもMarcのネットワークの方が良い場合もある。Marcには、そういう点での貢献も期待している」(Miner氏)
※1:本稿は、Salesforce.comがトヨタ自動車と提携する前に取材している
余談ではあるが、その人脈の一端を示す例が既にある。2010年5月3日、総務大臣(当時)の原口一博氏がiPadを利用し始めたことをつぶやき、話題になったことがあった。Wall Street Journalなどによると、そのiPadはBenioff氏から借りたものだったという。