クラウドサービス、営業・マーケティングの「型」
クラウドサービスの営業・マーケティングで、ある種の「型」を作ったのはMarc Benioff氏とも言える(あるいは、そのPRがうまいとも言えるだろうか)。
顧客に無料で利用できるプランを用意したり、ウェブサイトを単なる情報提供サイトにするのではなく、販促ツールとして最大限に活用するといった施策だ。詳しくはMarc Benioff氏が著した『クラウド誕生』(ダイヤモンド社)の「アドバイス37 無料で試してもらおう」「アドバイス39 ウェブサイトに売らせよう」を参照してほしいが、コンカーでも同様のアプローチをとっている。
話はSMBマーケットの攻略に及んだときだ。
「ConcurのSMBへのアプローチはこうだ——企業は購買する前に自分でウェブから申し込み、ソリューションをテストしてもらい、どういうものか馴染んでもらう。トライしたあとで、購入してもらうというアプローチだ」(Eberhard氏)
Concurのセールスプロセスでは、ウェブが重要な部分を占めているが、もちろんSMB専任のセールスチームもある。Miner氏は「クラウドベンダーでの経験からすると、Concurはウェブマーケティングツールの使い方が上手で、セールスの生産性が非常に高い。それは、コミュニケーションの質だったり、ディールをクローズさせるまでのスピードであったり、大きな契約をきっちりつかむチャンスを高めるような取り組みなど、そういう意味でのコミュニケーションの質が非常に高いのだ」と信頼を寄せている。
Concurは今、従業員規模が100〜500人の企業・環境に事業をフォーカスしているが、Eberhard氏によると、このセグメントでもサービス購買の動機に大きな違いがあるという。
「100人以下の企業がConcurを購入するのは、自分たちの成長についていくため——つまり人を雇わなくても成長を続けられるようにする、あるいは成長に集中するために購入する。そして、企業規模が大きくなればなるほど、Concurのツールを経費管理のために使ったり、監査をパスするために使ったり、ベンダーとの交渉を有利に運ぶために使う、あるいは雇い主のビジネスのやり方が簡素化されるような目的のこともある」(Eberhard氏)
成長地域に近い日本、そこにもチャンスがある
Concurは、日本と同じタイミングでインドにも現地法人を設立した。日本やインド周辺での事業が非常に好調であることを活用しての参入で、Eberhard氏は「他の地域が好調であることによって得られるリソースを活用することなく、日本に参入しても成功できない」と考えていたという。
「Concurにとっての正しい参入タイミングは、適切な投資ができる時だ」とEberhard氏。Miner氏も「投資というとき、それはお金のことだけではない。マネジメントの時間という意味でも、日本に投資して参入するいいタイミングだった」と補足。以前はワールドワイドセールスのリーダーだったEberhard氏を、アジア太平洋地域のセールスにフォーカスさせるだけの余裕が生まれてきたのだ。
「アジア太平洋は、成長のために極めて重要なマーケットだ。マーケット自体が急速に成長しているため、Concurもここにフォーカスすると決めた」(Eberhard氏)
経済的に成熟した日本市場は、規模こそ大きいものの成長を見込めるものだろうか。Eberhard氏は「日本経済の状況によって、経費管理が非常に注目を浴びている」との認識だ。
「旅費や経費は、給与に次いで大きな支払いとなっている。しかし、経費はうまく管理されているとは言えず、企業はツールを必要としている状況だ。加えて、他の経費項目も含めツールで管理するニーズがある」(Eberhard氏)
「そのため、Concurは景気の面でも参入のタイミングが正しかったと思っている。また、クラウドコンピューティングがサービスデリバリーのためのプラットフォームとして受け入れられているという背景も、参入のタイミングとして非常に良かった。ConcurがSaaSを提供することで、企業は経費に関する重要なツールを低コストで利用できる」(Eberhard氏)
コンカーで最高技術責任者を務める佐山氏も、「私たちはお客様の声を聞き続け、コンカーのシステムを常に改革している。お客様に利用して頂く中で、さまざまなニーズに対して応えていこうと思っている」と述べ、技術面での対応に自信をみせている。