米VMwareは8月30日(米国時間)、デスクトップ仮想化ソフトウェアの新版となる「VMware View 5」と、クラウドベースのアプリケーション管理ソフトウェア「VMware Horizon」を、米ラスベガスで開催中の年次カンファレンス「VMworld 2011」で正式に発表した。
デスクトップ転送プロトコル「PC over IP(PCoIP)」を活用する前版のView 4は2009年11月から日本国内で提供されている。iPadとAndroid端末にネイティブで対応する新版のView 5では、これまでよりも帯域幅を75%削減しているという。3D画像にも対応するとともに、ユニファイドコミュニケーション(UC)にも対応できるようになっている。これまでのデスクトップ仮想化基盤(VDI)は、容量の大きいデータ、UCのような動画と音声が同時に通信するコラボレーションを不得意としていたが、そうした課題を解決できるとしている。
必要なアプリケーションをどんな端末からも
Horizonは、以前同社内で「Project Horizon」というコードネームで呼ばれていたものであり、企業内のPCからさまざまなローカルアプリケーションやSaaS型のアプリケーションを利用する際に、ユーザーがすべてのアプリケーションを安全かつ簡単に使える共通の仕組みを提供するものだ。
たとえば、新しく入社したエンドユーザーに対して、必要なアプリケーションを自動的に使えるように設定したり、退社したエンドユーザーからのアプリケーションへのアクセスはすぐに遮断したり、といったことができるようになる。Horizonでは、こうしたポリシーを作るためのフレームワークを提供し、エンドユーザーが必要とするアプリケーションをどんな端末からでもすぐに使えるようになる。
Horizonは具体的には、IT部門がアプリケーションを管理するための「VMware Horizon Application Manager」とモバイル端末向け仮想化基盤ソフトウェア「VMware Horizon Mobile」で構成される。
Horizon Application Managerは、同社のアプリケーション仮想化ソフト「VMware ThinApp」の技術を拡張している。5月時点でSalesforce.comやDropboxなどのクラウドアプリケーションに対応していたが、今回の製品化では、Microsoft OfficeやFirefox、Internet Explorer、Adobe ReaderなどのWindowsアプリケーションを仮想化して使えるようにもなっている。
もう一方のHorizon Mobileは、同社のモバイル端末向け仮想化基盤「VMware Mobile Virtualization Platform(MVP)」をベースに開発したものだ。これは、私物のスマートフォンに仕事用のワークスペースを埋め込むことで、1台の端末上でプライベートと仕事の両方をこなすことができる。Horizon Application Managerで登録されたアプリケーションをスマートフォンで使うことができる。VMwareは、LGエレクトロニクスおよびSamsung電子と提携して、両社のAndroidスマートフォンにHorizon Mobileを埋め込んで使えるようにすることを明らかにしている。
Windowsベースのアプリケーションは減少に
VMwareのChris Young氏(エンドユーザーコンピューティング部門バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー)はHorizonについて、「端末にアプリケーションを紐付けるのではなく、エンドユーザーにアプリケーションを紐付ける仕組み」と説明する。
View 5にしても、Horizonにしても、VMwareの行動はいずれも数年前からの取り組みの結果だが、現在のトレンドの一つである「コンシューマーライゼーション」に目を向けたものと言える。Young氏は、情報システムのクライアントマシンを巡る状況を「デスクトップジレンマ」と表現し、自由を求めるエンドユーザーとコントロールを効かせたいIT部門との葛藤を描き出してみせた。
「エンドユーザーはいつでもどこからでもシステムにアクセスしたいし、新しい端末やアプリを活用している。ビジネスをこなす上で、新しいアプリを使いたいとも主張する。それに対してIT部門には、コストが上がることを恐れ、予算が低くなっているという現状がある。モバイル端末を使うことにはセキュリティやコンプライアンスのリスクがあると認識している」(Young氏)
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View 5やHorizonは、こうしたジレンマを解決するものとしてみることができる。いわば、コンシューマーライゼーションの流れにのった解決策とも言えるのだ。コンシューマーライゼーションという流れはまた、業務をスマートフォンやタブレットでこなすという「ポストPC」時代の到来という新たな状況も作り出している。「ポストPCの時代はすでに始まっている」(Young氏)のだ。
その証拠としてYoung氏げ言及した調査がある。これは、企業内の業務に活用されているアプリケーションの種類に触れたものだが、それによると、Windowsのアプリケーションとブラウザベースのアプリケーションの合計と、OSに中立的なアプリケーションの割合が、2011年の段階でちょうど半々になり、2011年を境に、OSに中立的なアプリケーションの割合がどんどん高くなっていくという。こうしたことからYoung氏は「新しいアプローチが求められている」と主張する。