ヴイエムウェア、モバイル向け仮想化プラットフォームを日本初公開

藤本京子(編集部)

2009-07-21 20:30

 VMwareは7月21日、携帯電話などのモバイル製品向け仮想化プラットフォーム「VMware Mobile Virtualization Platform」(VMware MVP)を日本で初公開した。これは、1台の携帯端末上で個人用の携帯環境とビジネス用の携帯環境を併用するといった利用法を可能にするものだ。

Krishnamurti氏 VMware モバイルマーケティング担当 プロダクトマネジメント&市場開発部門 ディレクターのSrinivas Krishnamurti氏

 VMware モバイルマーケティング担当 プロダクトマネジメント&市場開発部門 ディレクターのSrinivas Krishnamurti氏によると、同社では2年前よりモバイル製品の仮想化について検討していたという。それは、「携帯電話はすでに次世代のPCと言ってもいいほど、PCと近い存在になりつつあるためだ」とKrishnamurti氏。そこでKrishnamurti氏は、PCと同等の機能を持ち始めた携帯端末に対する3つの戦略を語った。

 その戦略のひとつは、まず携帯端末から企業のIT環境やデータセンターが管理できるようにすることだ。同社では、仮想マシンを管理するソフトウェアとして「VMware vCenter」を提供しているが、「将来的には携帯端末からvCenterを使い、vMotion機能でサーバの移行やリカバリマネージャの起動などが可能となる」とKrishnamurti氏。携帯端末向けvCenterは、すでにアルファバージョンが公開されている。

 戦略の2つ目は、携帯端末を次世代のシンクライアントとすることだ。現時点でシンクライアント端末として考えられるのは主にPCだが、「今後は携帯電話がシンクライアント端末になることもある」とKrishnamurti氏は語る。

 そして3つ目の戦略は、携帯端末そのものを仮想化するというものだ。Krishnamurti氏は、携帯端末の仮想化が重要な背景として、現在の携帯環境における問題点を指摘する。それは、ユーザーの携帯端末に対する依存度が日々高まっており、さまざまなデータや設定が端末に保存されているにもかかわらず、新しい端末に買い換える時は一部のデータがバックアップされるのみで、アプリケーションや設定までは移行できないこと、多くの端末メーカーがGoogleのAndroid OSをはじめとするオープンプラットフォームを利用し始めているが、そうしたオープンプラットフォーム上で企業向けサービスをどこまで安全に利用できるのか不透明だということ、また、端末の機能が豊富になるに従い、端末の開発に時間と費用がかかること、さらにはアプリケーション開発者にとっても、さまざまなOSに対応したアプリケーションを開発することが困難で、OSに依存したアプリケーションしか提供できないことなどだ。

 「携帯端末を仮想化できれば、こうした課題は解決できる。仮想化レイヤが入ることで、ソフトウェアとハードウェアを分離できるからだ」(Krishnamurti氏)

 VMwareではすでに、携帯端末向け仮想化プラットフォームとなるVMware MVPの開発に取り組んでおり、そのデモを公開した。デモでは、Nokia製の携帯端末に、個人用プラットフォームのAndroid OSのウィンドウと、ビジネス用プラットフォームのWindows CEのウィンドウを2つ並べ、両プラットフォームを瞬時に使い分けるといったことが行われた。ただし、2つのウィンドウを並べているのはデモを目的としたもので、実際のユーザーインターフェースでは、アプリケーションのひとつとして「個人用」、「ビジネス用」といったアイコンを並べ、より簡単に両環境にアクセスできるようにするという。VMware MVPのサイズは30Kバイトで、ARM用に最適化されている。

VMware MVP VMware MVPを搭載したNokia製端末

 Krishnamurti氏は、仮想化機能でアプリケーションの幅も広がり、「職業別など、よりパーソナライズされたアプリケーションを提供することも可能となる」と話す。また、「将来的にはアプリケーションや個人設定のバックアップができ、携帯端末でバックアップされたデータや設定をPC上で管理できるようにもなるだろう」と語った。

 なお、VMware MVPは、7月22日より東京ビックサイトにて開催される「ワイヤレスジャパン2009」にて展示される予定だ。

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