Book Review - 本邦初のビッグデータビジネス本を読んでみました - (page 2)

五味明子

2011-11-04 13:25

 いちおうレビューと称しているので、良いところばかりでなく、気になったところをいくつか挙げておきます。

文章がちょっとカタい

 まあ、ネタがネタなのであまり柔らかすぎるのもいかがかとは思いますが、なんとなく論文調なカタさがちょっと気になりました。言葉を丁寧に選んで書かれているので、読みにくいということはありません。ただ、IT関係者以外のビジネスパーソンも読者対象にしているなら、もうすこし柔らかめの語り口でもいいかな、と思います。

“非構造化データ”がなぜ出てこない?

 ビッグデータの定義となるとほとんど必ずといっていいほど出てくる言葉が「構造化データと非構造化データ」です。一般的にビッグデータのほとんどが非構造化データ、つまり従来のRDBMSに格納しにくい多構造化データといわれています。ところが本書ではあえて、この「非構造化データ」という言葉を使わないようにしているのか、その言葉はまったく見当たりませんでした(正確には1カ所だけあった)。ビジネス本では扱わないほうがよいと判断されたのかもしれませんが、非構造化データという言葉は現状のビッグデータを語るには欠かせない用語だけに、個人的にはきちんと説明してほしいと感じました。

Hadoop、NoSQL、MapReduce、RDBMSの関係が示されていない

 非構造化データと同じく、できるだけ一般読者向けにわかりやすく、専門用語を極力避ける方針だったのかもしれませんが、正直、重要な技術用語の説明不足は否めない印象です。ここが本書でいちばん残念なところでした。一般読者向けに作っているのだからこそ、丁寧に解説してほしかったですね。p.161から説明されているHadoopの解説部分、ここを読んですっと理解できるのはビッグデータという言葉にすでになじんでいる一部のIT関係者だけのような気がします。

用語集がほしい

 一般読者にはなじみのない用語も多く出てくるので、リファレンス的に使えるよう、巻末に簡単な用語集が付いていれば便利だったのにと思います。とはいっても、用語解説って執筆にけっこう時間と手間がかかるので、それならせめて索引をつけてほしかったですね。正直、引用/参考文献の一覧よりも、索引があったほうがよほど役に立ったのでは。


 …って、なんか重箱の隅をつつくような指摘をしたあとにあれですが、全体的には著者の豊富な知見と洞察、そして真摯な姿勢が伺える、とても誠実なビジネス書に仕上がっています。ビッグデータの現在をうまく切り取っただけでなく、ビッグデータというフィルタを通して2011年という時代を眺めている、といった見方もできる本です。1年後、2年後に読んでも、おもしろい発見ができそうな気がします。

 こういった新しいITトレンド(最近で言えばTwitter、Facebook、iPhone、クラウド…)を紹介した書籍の中には、とりあえず時流に乗っただけ、勝ち組の尻馬に乗っかっただけの中身のない薄っぺらい本が多いのですが(とくに新書に多いですねー)、少なくとも『ビッグデータビジネスの時代』はそういう類のモノとはかけ離れたところにあります。ITのまわりに生きる人間であれば、ぜひとも本書を手にとって、膨大なデータがいまも刻々と生成されていること、そのデータを使ってどんなビジネスが始まろうとしているのか、世の中がどんなふうに変わろうとしているのかに思いを馳せてみてほしいと思います。

 ……つか、かるくレビューするはずだったのに、なんでこんなに長くなるんだ>自分

本稿はフリーランスライター&エディター 五味明子氏のブログ「Not Only IT But…」のエントリ「Book Review - 本邦初のビッグデータビジネス本を読んでみました」の転載です。(ZDNet Japan編集部)

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