12月19日(米国時間)、2回の延期の後ITC(米国国際貿易委員会)がHTCのAndroidスマートフォンがAppleの特許権を侵害している旨の決定を行ないました(参照記事)。ITCは特許庁ではないので米国内での販売を差止めたり、損害賠償を命じたりする権限はありませんが、米国への輸入の差止め権限がありますので、米国外のメーカーにとっては重大です。
今回のAppleの訴えでは最終的に2件の特許が関係していました(最初の時点では10件)が、今回の決定ではそのうちの1件の侵害のみが認定されました。その1件とは米国特許5,946,647号、本ブログでも過去に「アップルの対HTC訴訟における特許を分析する(1)」で分析した特許、テキスト中の電話番号ぽい文字列や住所ぽい文字列を自動的に識別してリンク化するというアイデアの特許です。この機能は、AndroidのLinkifyというクラスで実現されているようなので、他のAndroid端末もAppleに訴えられれば同じ結果が出るでしょう。
とは言え、Linkifyの機能をはずせばこの特許は回避できます。禁輸措置が取られるのは2012年4月19日からだそうなので、それまでにLinkify機能をはずしたAndroidの別バージョン(米国輸出専用のビルドでもよい)を作れば禁輸が回避できる可能性が高いです(上記参照記事の元記事でもHTCは「すぐに当社のすべての電話からこの機能を削除する」と言っています)。ゆえに、HTC(およびその他のAndroid機器メーカー)にとっては致命的というほどではありません。しかし、ユーザーは不便を強いられてしまいますね(Linkify機能を復活させるアングラパッチを作る人も出てきたりしそうです)。
今回の決定に関係していた2件の特許のうちのもう一方、米国特許6,343,263 “real-time signal processing system for serially transmitted data” はマルチメディアOSのアーキテクチャーに関連するかなり基本的な特許だったので、こちらの方の侵害が認定されていたら、Android陣営にとってはかなり厳しい状況になっていたわけですが、その最悪のケースは避けられました。
で、そのもう一方の特許ですが、このブログでも分析内容を書こうと思って書けてませんでした。もちろん公報は読んでおり、その内容も一応は理解しているつもりなのですが、どこに特許性があるのかよくわからなかったからであります。こちらの特許については、今回のITCの決定で範囲外とされたことで、緊急度は減りましたのでお正月にでも書くことにします。
関連記事:
ZDNet Japan編集部:本稿はブログ「栗原潔のIT弁理士日記」からの転載です。執筆者の栗原潔氏は、株式会社テックバイザージェイピー代表で弁理士。IT分野に特化した知財コンサルティングを提供しています。