ものづくりが複雑化 ソフトウェアへの依存度強まる--中国・青島から

怒賀新也 (編集部) 2012年04月23日 12時34分

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 PLMソフトウェアを提供するシーメンスPLMソフトウェアは4月19日から2日間、中国・青島(チンタオ)で、新製品をアジア太平洋の記者に紹介する会見を開催し、生産関連の情報を横断的に共有するソフトウェア製品の最新版「Teamcenter 9」の投入を発表した。生産拠点のグローバル化や製品ライフサイクル短縮化により、複雑な情報を盛り込み、すばやく処理しなければヒット商品が生み出せないなど、ものづくりの手法が変わりつつあることを伝えた。

 「日本の製造業は模範(descipline)です」

 取材に来ていたインドおよびフィリピンの雑誌記者はこう話してくれた。シーメンスPLMのユーザーで、中国の建機大手Foton Lovolのリー・ジンリアン最高情報責任者(CIO)も日本企業について「追いかける存在だ」と語っており、日本の製造業への一般的な評価は今も高いことが分かった。

チャック・グラインドスタッフCEO
チャック・グラインドスタッフCEO

 製造プロセスのグローバル化や製品ライフサイクルの短縮化といった要件を満たすために、ものづくりのあるべき姿が変わりつつあるという。今後の主流は、シーメンスPLMやダッソー・システムズ、PTCなどが提供するPLM系ソフトウェアを活用した組織横断的な情報共有体制であるとの指摘があり、その前提に立つと日本の製造業が今後も高い評価を維持できる保証はない。シーメンスPLMソフトウェアのチャック・グラインドスタッフCEOは「アジア、特に中国が著しく伸びている」と話しており、中国製造業がこうしたソフトウェアを活用して技術力や生産性を高めていく可能性は高い。

 同氏は「製品開発においてソフトウェアの占める重要性がますます高まっている」と指摘する。主な顧客は、自動車、エレクトロニクス、機械、航空・防衛といった製造業者だ。

 自動車なら「動く、止まる」のような一次機能で売れる製品が少なくなり、「例えば、洗濯機自身が洗剤の量を判断できるようにする」(同氏)などヒット商品の開発には付加価値の重要度が高まっている。消費者ニーズ、商品化の速度、コスト、コンプライアンス、生産のグローバル化などさまざまな要件を考慮する必要が出てきている。

 製品を設計する際に、実物でなくCADソフトウェアを使い、安全性のテストなどを含め設計していく方法は製造業者の多くに浸透した。耐火性や風圧などに関するテストをコンピュータでシミュレートする際の精度には、ソフトウェアの限界があるとも言われるが、「ソフトウェアシミューレーションの精度は以前よりかなり高まっている」(同氏)という。

 現在はCADだけでなく、インターネットを介して世界にまたがる「製造チーム」をつくり、製造から販売、顧客サポート、廃棄にいたる製品のライフサイクル全体を管理する動きが加速しつつある。シーメンスPLMならTeamcenterがその役割を果たすものだ。例えば、Teamcenterの「Active Work Space」機能は、製品計画、開発、製造、サポートのライフサイクルを通じて、拠点横断的に情報を共有する仕組みだ。製品開発のプロセスにおいて、ある情報を最も必要とする個人を見つけることなどが可能になる。

中国企業のユーザー会が併催され1000人以上が集まるパーティが催された
会場ではユーザー会が併催。中国各地から1000人以上が集まりパーティが催された

世界的メーカーがPLMを活用

 Teamcenterのユーザーには、トヨタ自動車、日産自動車、Ford、GMなどの自動車大手をはじめ、AppleやSamsung、Microsoft、音響機器のボーズ(Bose)、キヤノン、中国のハイアールなど世界的な大企業が含まれる。Teamcenterは、システムエンジニアリング、戦略企画、設計プロセス、BOM、規制適合、コンテンツ、ブランド、サプライヤーとの関係、メカトロニクス、製造、解析情報、メンテナンスなどの各管理機能を提供する。また、リコールの発生に備え「問題となっている部品の特定や生産プロセスを詳細にさかのぼれることも導入の大きな理由になっている」という。

 また、多くの導入企業がERPなどの企業の基幹系システムとのデータ連携を図っている。最近では、SNSで消費者が投げ掛けた製品に対する膨大な数の意見を非構造化データとして吸い上げ、分析して新たな製品設計に生かしたりといったいわゆる「ビッグデータ」の取り組みにも注力していることをグラインドスタッフCEOは紹介した。

 「中国企業は最初から世界展開を前提にしている点に特徴がある」と同氏は話す。IT導入の歴史が浅い中国企業が、ERPやCRMなどの基幹系システムとの連携を含め、比較的ゼロベースに近い状態でグローバルを意識したシステムを設計できる事情はあるようだ。

 一方、グラインドスタッフCEOは日本企業の製造業へのメッセージとして、Appleが電話、カメラ、PC、アプリなどさまざまな要素を集めてiPhoneという1つの商品を作り出したことを引き合いに出しながら、「イノベーションの意識を持ち、まったく新しい製品カテゴリーをつくるべき」と忠告してくれた。

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