2010年5月に独SAPによる買収が発表されたSybaseが、SAPのモバイル分野で中核製品となるデータベースの領域で「シンクロ率」を高めている。
データウェアハウス向けカラムベースデータベース「IQ」の最新版を紹介するために来日したSybaseのプロダクトマーケティング担当シニアディレクター、ダン・ラール氏によると、鍵はビジネスデータを分析するためのデータウェアハウス(DWH)におけるSAPのインメモリソフトウェア「HANA(High-Performance Analytic Appliance)」とSybaseのDWH向けカラムベースデータベース「IQ」のすみ分けにある。
ダン・ラール氏
結論は「アクセス頻度が高いものはHANA、比較的低いものはIQに格納し、全体として高速処理を実現する」(ラール氏)という分かりやすいもの。高頻度の処理ではHANAのインメモリの利点を生かす。ラール氏にSAP傘下のSybaseの現状と、製品戦略を聞いた。
SybaseとSAPの現状の関係について「データベース管理の統合戦略が明確になってきた」という。HANAとIQによる製品戦略だけでなく、2012年には両社の営業部隊の統合が実現する。日本法人の早川典之社長も「SAPが持つ巨大な顧客ベースにSybase製品を導入できる利点は大きい」と話す。
「150億ユーロに上るビジネス規模、歴史を考えてもSybaseにとってSAPは信頼のおけるアドバイザー。有益な統合だった」とラール氏はコメントした。
SybaseはIQの最新版「Sybase IQ 15.4」を5月に出荷すると4月18日に発表した。IQは行ではなく、列(カラム)単位でデータの保存とアクセスを実施するカラムベースのデータベース。Oracleをはじめ、IBMが買収したNetezza、Teradataも提供する。
ラール氏が示したSybaseとSAPの製品の位置づけ。ERP向けDBとしては従来型のSybaseの「ASE」、SAPの情報系ソフトウェア「BW」と連携し、分析処理するのがHANAもしくはIQだ。
15.4では、大規模データを分散処理する基盤ソフトウェア「Hadoop」および統計解析プログラミング言語「R」と連携するための機能をプラグインとして提供することで、分析をデータベース内部で実施する「インデータ分析」を実現した。従来のように、分析用データをIQからローカル環境に取り出し、ツールで分析処理してからIQに戻すといった負荷の高い作業をしなくて済むようになるという。
技術的には、Hadoopとの連携で「クライアント側の連携」「ETL処理」「データ連携」「クエリ連携」を実装した。
SAPユーザーへのSybase製品導入を前向きにとらえる日本法人の早川社長
それぞれについて、クライアント側の連携ではQuestのSQLツール「Toad」を利用し、HadoopとSybase IQからデータを取り出せる。ETL処理ではオープンソースのETL「SQOOP」を利用し、Hadoopからデータを取り出してIQに転送する。データ連携ではIQにデータをロードせずに、Hadoopの分散ファイルシステム「Hadoop Distributed File System(HDFS)」のデータをIQのクエリ対象にした。
またR言語との連携では、R言語ユーザーがJDBCインターフェース経由でIQデータの分析ができる。また、R言語で実行されている関数にアクセスし、IQ内でSQL関数として起動することもできる。
Sybase IQ Enterprise Editionの価格は、従来と同じ1008万円。