レンタルサーバ事業者のファーストサーバが顧客のメールおよびウェブデータを消失した問題で、内田・鮫島法律事務所で、ITにかかわる業務を担当する伊藤雅浩弁護士に話を聞いた。現状、「対価の総額まで」としたファーストサーバの損害賠償規定に期間の定めがない点が、特に長期契約ユーザーにとっては多少の救いがあるとしている。
長期ユーザーは「まだまし」という状況

内田・鮫島法律事務所の伊藤弁護士。アクセンチュアなどでシステムインテグレーションを担当後、弁護士登録し、IT関連を担当している。
今回の問題については、クラウドなどのサービスの潜在的なリスクとして認識されていたことが、ついに現実化してしまったという指摘に同意できる。現状、免責条項(35条4項)で「システムの不具合によるデータの破損・紛失に関して一切の責任を負わない」旨を規定しており、形式的に適用するとファーストサーバが責任を負わない可能性もある。
現状は、ファーストサーバはこれまで顧客が支払った対価の総額を上限に、損害賠償に応じるとしており、長期契約者にとっては良い情報といえる(編註:契約期間が長い分だけファーストサーバに支払った金額が多くなると考えられるため)。だが、言い値で払うのか、あるいは詳細な被害額を証明するとなると、損害額の試算は非常に難しい。
こうした事故は小規模なものは時々起きているが、影響範囲は特定のユーザーにとどまるものが多かった。今回は大規模だ。
今後の影響については、バックアップをどうするかという問題にユーザーは改めて向き合う必要が出てくる。だが、アプリケーションなどのバックアップはファイルサーバほど手続きが簡単ではないという面もある。
また、今回は日本の事業者だったが、もしこれが海外の事業者だとすると、情報公開などの問題も出てくる。ユーザー企業が、レンタルサーバに対して、自己防衛するしかないという認識を強めるかもしれない。
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