各界のエグゼクティブに価値創造のヒントを聞く連載「ZDNet Japan トップインタビュー」。今回は、IT調査大手、米Gartnerのシニア バイス プレジデントでCIOのダーコ・へリック氏に、ITの利用方法や今後の戦略について聞いた。
パッケージソフトでCRMの統合を目指す
ガートナーは3年前から社内のCRMシステム再構築に取り組んでいる。ガートナーのシニア バイス プレジデントで最高情報責任者(CIO)のダーコ・へリック氏は次のように話す。
社員の多くがITの専門家であるアナリストであるため、苦労することがあると笑うヘリック氏
「この取り組みは、アナリスト、営業、エグゼクティブパートナー、コンサルタント、インターナルセールス、サポートといった各ビジネスユニットが顧客情報を共有してビジネスの生産性を上げるのが目的だ。例えば、ある顧客に対して営業担当者がさまざまな提案をしていたとする。その内容を、後からアプローチするコンサルタントがしっかりと把握できるようにするといったイメージだ」
ガートナーでは、これまで各ユニットが個別に顧客情報を管理しつつ、互いに協力体制を取ってアプローチしていたが、ここにきてしっかりとCRMを統合しようということになったという。
ガートナーのCRMはBI(ビジネスインテリジェンス)システムとリアルタイムで連携しているもので、CRMで取り込まれた情報をすぐさまBIシステムで分析することも可能とのことだ。
今回のCRMシステムとして、製品名こそ明かさなかったが、一般的に名の通ったパッケージ製品を採用したという。「これをできるだけ手を加えず、どうしても必要な機能がない場合だけ追加で開発するという方針を取った」とヘリック氏は話す。
システム導入で基本とする3つのステップ
ヘリック氏によれば、今回のCRMパッケージの導入は社内のIT人材の手によって実施したという。
「BIなどの他のアプリケーションと密接に連携していることから、今回はこのような方法を取った。しかしこれはケースによって違ってくるもの。社内スタッフがすべてパッケージの導入作業をしているわけではない」
ヘリック氏は、社内でのIT投資には必ずCFOがトップにいる「ガバナンスコミッティー」という組織で、導入による目的、コストはもちろんのこと、導入による効果、メリットについても明確な数字として共有するという。
「今回の導入には、私が属しているIT部門とシステムを活用するビジネス部門が最初からチームを組織して取り組んだ。わたしがIT部門としてコミットしたのは導入の第一段階で効果についてだ。それから先についてはコミットしていない。また、作成したビジネスケースのオーナーはビジネス部門側となった」(同氏)
ヘリック氏によると、もちろん今回のCRM導入にはビジョンは策定してある。ただし、それは「われわれのCRMはこういうものであるのが理想だろう」というものであって、導入の手法や完成までの期日については明確にはしていなかった。
「社内のシステム導入にはいつも3ステップを考えている。まず、どうにか導入して稼働させることができる“Make it”の段階、改善していく“Make it work”の段階、そして最後がまさに理想型が出来上がる“Make it great”の段階だ。3年前から進めている今回のCRMはMake itとMake it workの間ぐらいのステップにある」とヘリック氏は話す。