ワークスペース進化論

徹底討論 日本企業はグローバル化にどう向き合うべきか

取材:怒賀新也 文・構成:五味明子 2012年09月10日 10時35分

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 「ワークスペースのあり方」というテーマを論じるとき、昨今では日本企業のグローバル化を併せて語るケースがでてきた。いまやどんな業種や業態であれ、国内に閉じたビジネス展開をリスクと考える企業が増えてきた。そして市場が変われば顧客も商習慣も変わる。その動きはやがて、その企業の従業員の働き方にも大きく影響を与えるようになる。

 東日本大震災の試練から完全に立ち直ることができないながらも、日本企業はその規模の大きさを問わず、グローバルを意識せざるを得なくなってきている。岐路に立たされている企業に対し、ITはどんなアプローチで迫ればその生産性向上に貢献できるのか。2回目の討論では「日本企業のグローバル化とITの関係」について考察する。(1回目 徹底討論 3.11を境に変わりつつある情シス部門の役割はこちら)。

 本特集では、3.11以降、日本人にとっての最適なワークスペースの在り方を、企業ITという切り口から4人の識者によるディスカッションを通じて検証したい。ディスカッションの参加者は以下の通り。

  • NTTコミュニケーションズ 先端IPアーキテクチャセンタ 担当部長 山下達也氏
  • セールスフォース・ドットコム アライアンス本部 ISVアライアンス部 シニアディレクター 御代茂樹氏
  • グーグル エンタープライズ部門 シニアプロダクトマーケティングマネジャー 藤井彰人氏
  • (モデレータ)日本技芸 代表取締役社長 御手洗大祐氏
「すべてが急に変わったわけではないが、着実な変化があった」などそれぞれの立場から意見が飛び出し議論は白熱した
「すべてが急に変わったわけではないが、着実な変化があった」など議論は白熱した

御手洗 3.11以来、厳しい状況が続く日本経済にあって、多くの企業がグローバル化という新たなハードルを前に試行錯誤を続けています。いずれも世界的に名前の知られたグローバル企業で活躍する皆さんの目から見て、日本企業がグローバルで戦っていくために必要な要素を挙げてください。

御代 SaaSを提供する企業に勤めている者として「企業はIT化することで力を増す」ということを強調したいですね。極論すれば、現在はネジ1本"だけ"で世界に出ていくことが可能なのです。

セールスフォース・ドットコム アライアンス本部 ISVアライアンス部 シニアディレクター 御代茂樹氏
セールスフォース・ドットコム アライアンス本部 ISVアライアンス部 シニアディレクター 御代茂樹氏

 例えば、インドのプラントから特殊なネジに関する問い合わせが来たとする。少し前なら、図面とかマニュアルとか、そういう書類一式を抱えて担当者が現地まで行ってプレゼンしなければならなかったのですが、今はIT、とりわけクラウドの力を使えばその労力を大幅に削減できます。ITがビジネスのあり方を変えていくという、この事実を我々IT企業は日本企業に対してもっとアピールする義務がある。顧客に「ITを使ってもらう」ことがメインのビジネスはもう終わったと言っていい。これからは本当にビジネスのためにITを利用してほしいと願っています。

スピードがグローバル競争のカギ

藤井 私はグローバル化を進める上でもっとも重要なポイントとして"スピード"を挙げたい。例えばスマートフォンで成功した企業、たとえばSamsungやHTCは本当に市場への対応が速い。速さがすべてです。完全に、スピードの重要性が規模のそれを上回っている。「速さが質を凌駕する」をまさに地で行っているのです。

御手洗 スピードがグローバルビジネスに与える最大の利点は何でしょう?

藤井 ビジネスをグローバルに分散して展開したとき、昔ながらの「一人で極限まで頑張る」というスタイルは通用しません。スピード感を持ち、グローバルでコラボレーションしていく必要があるのです。スピードとコラボレーションがうまく噛み合ったとき、そこにはイノベーションが生まれてきます。Googleもそのようにコラボレーションからイノベーションを生み出してきた。コラボレーションとイノベーションの相関関係はかなり深いです。

グーグル エンタープライズ部門 シニアプロダクトマーケティングマネジャー 藤井彰人氏
グーグル エンタープライズ部門 シニアプロダクトマーケティングマネジャー 藤井彰人氏

御手洗 コラボレーションというと、上司と部下のようなタテの関係だけでなく、社外も含めたヨコのつながりも求められるイメージがあります。

藤井 タテ/ヨコというより、社内のコラボレーションがうまくいかないとイノベーションは生まれにくいのです。もっと突っ込んで言うと「これは俺のところ(部署、チーム、個社など)には関係ない」というセリフが社内で平気で飛び交うような組織では、コラボレーションもイノベーションもうまくいかない。従業員やメンバーのひとりひとりが全体を意識した行動や思考になっているか。そうでなければ、自発的なコラボレーションは生まれにくい。仮に調整役を置いてコラボレーションを促進しようとしても、自由闊達な雰囲気からは遠のいてしまうのであまり効果が生まれません。

山下 イノベーションがグローバルで戦っていく上で重要というのはすごくよく分かります。ただ、個人的には「国際競争力」の向上っていったい何を指しているのか、最近では悩むことが多くなりました。

NTTコミュニケーションズ 先端IPアーキテクチャセンタ 担当部長 山下達也氏
NTTコミュニケーションズ 先端IPアーキテクチャセンタ 担当部長 山下達也氏

 単純な例えだけど、イチローが頑張れば一般の日本人なら嬉しくなるし、「オレも頑張ろう」という気になりやすい。でも今言われている「国際競争力の向上」ってそういうモチベーションとは違うところで議論されているような気がしてならない。Samsungじゃなくて日本企業の部品が世界で使われるようになれば、それで「国際競争力が向上した」といえるのか。海外の企業がもっているシェアを日本企業が奪うことがグローバル化なのか。 正直分からないというのが本音です。

 NTTグループに話題を移すと、ここ数年はアジアでのビジネスをかなり積極的に展開しています。外からは「NTTはアジアの通信のハブのような存在になるべき」という声を聞くこともある。それがグローバル化、日本の国際競争力の向上につながることなのか。かなり悩ましいですね。

御代 NTTが手がけているインフラに関しては、世界でも日本はトップクラスですし、十分に国際競争力を備えていると思います。ただ、やはりサービスが弱い。世界のニーズをとらまえている日本発のITサービスというものを、残念ながらほとんど聞いたこがありません。

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